Japan Association for Medical Informatics

[2-L-1-PP2-4] ゲノム疫学研究における被検者重複登録回避のための実名登録システムの開発

山口 泉1, 川口 喬久1, 沖 俊吾2, 内藤 千秋3, 松田 文彦1 (1.京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター, 2.日本ユニシス株式会社, 3.株式会社グリーン情報システムズ)

背景:疾患を対象とした多施設共同ゲノム疫学研究では匿名化した被検者情報を臨床情報や生体試料(DNA検体など)と紐付けて解析拠点施設に集約し、解析を行う体制が一般的である。このような場合に特に希少難病では同一患者が複数医療機関を受診し、それぞれで同一の疫学研究などに登録されることがあるが、重複登録はゲノム解析などの研究資源の浪費や研究データの精度低下を招く。

目的:疫学研究における被検者の重複登録回避を目標として被検者実名情報の管理・照合・名寄せを行う実名情報管理システムを構築する。

方法:当施設のゲノム疫学情報管理基盤は検体提供元の施設で匿名化した被検者IDとそれに紐付く臨床情報・検体情報を管理する。今回は実名情報の暗号化、匿名化、照合などの機能を備え、当方の現行情報基盤と連携可能な実名情報管理システムを開発した。開発の要点は以下の通り。①実名情報と臨床情報の分割管理、②実名情報の検索可能暗号化、③実名情報への厳格なアクセス制御とセキュリティ対策、④被検者情報照合機能

結果:①実名情報管理システムを独立サーバとし、現行情報基盤と物理的に離れた学内クラウドサービスに実装した。
②実名情報暗号化は業者に委託して検索可能分散暗号化技術を開発した。
③実名情報へのアクセス制御はユーザ権限設定とクライアント証明書により行い、リバースプロキシを経由してアクセスする体制とした。
④照合機能は (1) カナ氏名、(2) 生年月日、(3) 性別をキーとして重複の可能性がある被検者を提示し、個人情報管理者が重複の有無を判断して必要に応じて名寄せを行う仕組みとした。

考察:上記により実名情報を安全に管理し、必要に応じてそれを個人情報管理者にのみ提示し、名寄せによって重複登録が回避可能な仕組みが実現出来たと考える。本システムの実運用については疫学研究で実名情報を共同研究機関に渡す運用が一般的ではないため、①共同研究者の理解促進、②同意説明内容の工夫が必要で、現在対応中である。また、現在当施設で取り組んでいる希少難病レジストリシステムにも導入する予定である。