Japan Association for Medical Informatics

[2-L-2-PP4-2] 旧電子カルテシステムクラウド移行の効果

新田 篤史, 菅野 俊, 長尾 秀紀, 多田 賀津子, 村尾 昇, 片山 哲夫, 宮本 忠司 (兵庫県立尼崎総合医療センター)

【はじめに】
兵庫県立尼崎総合医療センター(以下AGMC)は、旧兵庫県立尼崎病院(病床数500床)と旧兵庫県立塚口病院(病床数300床)が730床の急性期総合病院として平成27年7月統廃合し開院した。統合前には尼崎病院のみ電子カルテを使用しており、この電子カルテサーバーをAGMCの電子カルテから参照可能にした。今回、この旧電子カルテシステム維持にかかる課題解決のため、旧電子カルテサーバーのクラウド移行を行ったので報告する。
【旧電子カルテシステム維持の課題】
1.ハードウェア老朽化による故障・保守部品欠品のリスク 2.データバックアップがない 3.維持コストの高止り
【クラウド移行について】
旧電子カルテサーバーをMicrosoft Azureのクラウドサービス上に構築し、院内ネットワークとクラウドサービス(データセンター)間はVPN接続によりセキュリティを担保した。これにより、当院内の電子カルテ端末からのみ参照可能とし、クラウド上に医療情報を格納しても問題がないというガイドラインや指針にも対応済である(3省4ガイドライン対応)。
【クラウド運用による効果】
1.ハードウェアの監視・メンテナンスがほぼ不要 2.データバックアップが不要(データセンター側で3重に保管) 3.維持・運用コストの低減(年間約3割削減)。さらに副次的な効果として、サーバー室の物理的・電力的な余裕を得ることができた。ユーザーはクラウド運用変更後も意識せず、これまでと変わらない操作での利用を可能とした。
【まとめ】
クラウド運用は、今後の病院統廃合による旧システム維持対策の選択肢の一つとして有用であると考えられる。将来、旧電子カルテだけでなく、現行電子カルテのバックアップデータ遠隔保管や各病院内・病院間の情報共有基盤構築などクラウドの利活用が考えられる。それらを考慮した上で、各病院でのクラウド運用ではなく、運用にかかるコストや管理の最適化の為、県立病院全体で共有可能な共通県域クラウド構築を検討していきたい。