Japan Association for Medical Informatics

[2-L-2-PP4-3] 同一ベンダーによる病院情報システム更新に伴う問題発生とその対応における課題

廣瀬 隼1, 山ノ内 祥訓2, 宇宿 功市郎1 (1.熊本大学医学部附属病院 医療情報経営企画部, 2.熊本大学医学部附属病院 総合臨床研究部)

【目的】全国400床以上の病院における病院情報システムの導入率は2015年に70%を超え、ますますその普及が進んでおり、すでにシステム更新が行われている施設も少なくない。本院では2010年に診療録記載も電子化した病院情報システムを導入し、2017年にシステムを更新した。同一ベンダーによる更新であり作業自体は計画通りに進行したが、一方で様々な問題が発生した。そこで、更新に伴う問題点を分析し効率的な問題対応について検討を加えた。
【方法】新システムの稼働を開始した2017年1月1日から4月30日までに、病院情報システムの利用者から電話または文書で医療情報担当部署に寄せられた内容を対象とした。病院の運用に関わるものは病院側で対応し、残りの内容をベンダー側で「不具合」「要望」「質問」「その他」に分類して、それぞれの発生数と対応数を経時的に評価した。
【結果】調査期間全体の発生数は5445件であり、1月1870件、2月1553件、3月1842件、4月180件だった。「不具合」「要望」「質問」「その他」の発生はそれぞれ1702件、474件、707件、2562件で、対応完了数はそれぞれ1625件(95%)、309件(65%)、641件(91%)、2481件(97%)だった。最も完了率の低い「要望」の内訳は、表示、入力、出力に関するものが254件、46件、35件と多く、その他は権限、マスタ、連携、機器、機能追加に関する内容だった。これらの発生要因のうち263件はシステムの特性によるのだが、旧システムで実現出来ていたが新システムでは不可能となっていたもので「不具合」に相当する内容が40件あった。
【結論】病院情報システムの移行後に発生した多数の問題点に対して93%が対応完了した。特に稼働前に想定した動きや機能と異なる「不具合」に対しては優先して早急な対応が行われた。一方で、「要望」のなかにも「不具合」と評価される内容があり、対応が遅れた案件が確認された。病院情報システムの有用性と効率性を高め、利用者の満足度を向上させるためには、問題点のより詳細な把握、改修作業の詳細な検討ならびに優先順の決定が重要となると考えた。