Japan Association for Medical Informatics

[2-L-2-PP4-5] 有床診療所における電子カルテ導入の一考察

髙野 香子, 髙野 壮史 (医療法人 髙野胃腸科)

有床診療所での電子カルテ導入は、必要な機能の選定や院内各システムとの接続などの点で、病院や無床診療所での導入とは異なると言われている。今回、当院は将来的に連携医療機関とのデータ共有や特別養護老人ホーム及び訪問診療時のモバイル利用を視野に入れた電子カルテ導入とPACSの入れ替えを行った。その構築に際し、若干の知見を得たので報告する。
 電子カルテとPACSの運用開始は、2017年3月当初と計画した。前年9月下旬、電子化の範囲を確定するために、対象業務の特定と電子化時に変更が想定される内容、動線の変化について検討を行なった。また電子カルテ未経験のスタッフに外来業務の何が電子化され、どの様に動線が変わると想定されるのか、業務内容の変更や負担をどのように分担するのかという基本的事項説明を行う必要があった。
 10月下旬に仕様に基づいた電子カルテ・PACS各ベンダに提案・見積書の作成を依頼し、次にセキュリティを重視したネットワーク整備を検討し、工事を1月初旬に行い、2月1日よりレセプトコンピュータ、翌月に電子カルテの稼働を開始した。各ベンダにはToDoリストの作成を要請し、電子カルテに係る院内スタッフ全員で確認を行った。
 機能及びデータの移行と設定コストを踏まえ、現用レセコンベンダの電子カルテを採用した。また、電子カルテ導入前と導入後の在院時間を調査した。レセコン導入から電子カルテ導入後6週間は患者の在院時間が導入前や現在よりも長かった。
 導入の検討当初からパッケージ製品を購入するだけではない為何らかの支障が運用時に出ると想定し、ベンダと当院スタッフのヒアリングの機会を数回にわたり設定していたが、スタッフ全体の医療業務動線の観察や現場調査等が十分に行われていなかった事、電子カルテの習熟期間が短くトラブル対応の想定不備があったことが一因と考えた。今後の機能改善に向け、全体的な情報共有について方略を尽くす必要があると思われる。