Japan Association for Medical Informatics

[3-A-1-CS2-1] 地域包括ケアシステムにおける医療介護連携及び情報連携の展望― 柏プロジェクトを通して

辻 哲夫 (東京大学 高齢社会総合研究機構)

世界に例のない超高齢化が日本で進行している。
急速に進む後期高齢者の急増への対応は、世界における高齢化最前線国日本の試金石である。そのあるべき方向は、生活習慣病の予防とフレイル(虚弱)の予防を基本においてこれに国を挙げて取り組むことである。併せて、治す医療が大きく成功し、概ね誰もが長生きできるようになり虚弱な状態を経て死に至るということが普通になる中で、我々は、在宅で笑顔で生き切れる新しい社会システムを創ることが切実に求められている。
これらのことは、とりわけ医療に対して大きな変革を求めることとなっている。
具体的には、病気を治すことを主眼としてきたこれまでの「病院医療」に加えて、「在宅医療を含む地域包括ケア」へとウイングを広げていくことが大きな課題であり、先の医療介護の総合的な制度改革でもその方向性が明らかとなった。
柏プロジェクトでは、東京大学高齢社会総合研究機構飯島教授が中が中心となってフレイルの構造解明と早期予防戦略の構築に取り組みつつ、柏市、柏市医師会等が中心となって、地域のかかりつけ医が在宅医療に合理的な形で取り組めるようにするための研修やICTによる情報連携を含めた多職種連携のシステム化等の様々な実践を行っている。
在宅医療介護連携推進事業は平成30年度から全面施行されるが、「治す医療」ともいえる病院医療に対して、在宅医療は、「支える医療」ともいえるものであり、両者の間で在宅医療の意義につき合意し、その連携についての標準化作業が急がれている。更に、在宅医療の質の評価について検証を行いつつ、まずは、多職種連携を含めた在宅医療の標準化を行う努力も必要である。
本講演では、以上のような問題意識の下で、柏プロジェクトの取り組みを通して、医療介護連携政策及びその中での情報連携の展望につき述べたい。