Japan Association for Medical Informatics

[3-A-1-CS2-3] 地域包括ケアシステムの展望

中山 雅晴 (東北大学大学院医学系研究科 医学情報学分野)

超高齢社会の中、患者を医療機関のみならず介護施設も含めた地域全体で見守っていくことが重要視されており、その手段としてICTを用いた地域医療介護情報連携システムの活用が期待されている。宮城県では、東日本大震災を契機として『みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会(Miyagi Medical and Welfare Information Network: MMWIN)』が発足し、全県下における診療情報のバックアップストレージと蓄積した情報を共有する地域医療介護連携システムが構築された。県内における病院、診療所、薬局に加え、介護施設からも、患者データを厚労省標準保存形式であるStandardized Structured Medical Information eXchange version 2(SS-MIX2)ストレージに保存し、患者同意の下、各職種の権限に基づいた閲覧を可能としている。バックアップデータはのべ患者数約720万人に増え、情報共有同意患者数も4万人を超えた。参加施設は平成29年9月20日時点で634を数え、病院は県内施設の過半数、薬局は23%、診療所は15%が加わっている。しかしながら、介護施設数は県内全体の約7%と、医療機関に比べると少ない参加にとどまっている。また、活用の面でも、検査値やアレルギーの有無、他院における処方薬重複等の確認、地域連携における患者紹介など病診薬連携の実例が増えてきているが、介護施設にとって必要な医療情報や、逆に医療機関にとって必要な介護情報はまだ明確とは言えず、そのため相互共有は不十分であり、今後の課題となっている。実際、介護システムからSS-MIX2標準ストレージに出力できるデータにも限界があり、共有を妨げる一因となっている。そのため、我々は共有できる情報を増やすべく、文書連携システムを導入した。これによりSS-MIX2標準ストレージでカバーできない病院情報システム内の文書や、院内にあるWord、Excelといった形式の汎用書類もMMWIN内で共有が可能となっている。さらに、介護施設を持つ病院と積極的なミーティングを持つことで、医療介護連携にとってどんな情報の共有をすることが有益かを検討している。