一般社団法人 日本医療情報学会

[3-A-3-CS4-3] 生涯保健情報統合基盤の構築と課題

石川 広己 (公益社団法人 日本医師会)

「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」(次世代医療基盤法案)が平成29年5月12日に公布された。
日本医師会は、同法で規定される認定匿名加工医療情報作成事業者(認定事業者)に求められる要件を明らかにするとともに、同法が患者、医療関係者にとっても実りあるものとするため、日本医師会ORCA管理機構と共同で、「生涯保健情報統合基盤」の構築・運用について研究を行っている。同基盤は、小規模医療機関や健診機関、介護事業所等から医療情報、健診情報、介護情報、死亡情報、生活情報を安全に収集・統合し、診療支援や臨床研究を通じて医療の質向上に資するものである。
本研究は①情報収集サブシステムの整備・運用、②認定事業者統合サブシステムの研究・開発・運用、③情報利活用に関する研究の3部で構成される。
①情報収集サブシステムの整備・運用では、医療情報、健診情報、介護情報、死亡情報、生活情報のそれぞれについて収集環境の設計開発を進めている。
②認定事業者統合サブシステムの研究・開発・運用では、医療等IDを用いて安全に名寄せを行い、秘密分散技術を用いて安全に収集されたデータを統合ストレージに蓄積するとともに、機械学習を用いて臨床現場の利用場面に応じた患者本人のサマリを自動作成する機能について、概要設計を進めている。
③情報利活用に関する研究では、HPKIと医療等IDを用いて、小規模医療機関において受診時に患者本人のサマリを参照する機能を設計するとともに、匿名加工情報を第三者に提供する事業の計画を立案している。
しかしながら、丁寧なオプトアウトのあり方、名寄せや匿名加工を含む共通運用指針と手法の選択、医療等分野専用ネットワークの必要性、匿名加工医療情報の取扱に関する監査・認証、サイバー防災訓練、全国民を巻き込んだ合意形成や広報促進の方法等、実現に向けた課題は山積しており、法施行に向けて議論の停滞は許されない。