Japan Association for Medical Informatics

[3-A-3-CS4-4] SS-MIXを基礎とした大規模診療データの収集と利活用に関する研究の目指す未来

山本 隆一 (一般財団法人医療情報システム開発センター)

医学は過去の医療における診療情報の蓄積によって発展するもので、化学的あるいは動物を使った実験の知見だけではなしえない。したがって蓄積された情報を後ろ向きに分析すること、あるいは大量の情報を探索的に分析するいわゆるビッグデータ解析の意義は大きい。約半世紀にわたって日本では診療情報のデジタル化が進められ、上記の利活用の可能性は飛躍的に増大しているように見える。しかし問題はいくつか残っている。重要な2点を上げると、一つはプライバシー権を主体とする患者の権利の保護であり、もう一つは情報の標準化である。プライバシーの保護は確実な匿名加工と運用ルールの確保、さらには利用目的の選定と利用にともなう情報のライフサイクル管理によってなされうるが、個情法の改定による外枠の厳格化と次世代医療基盤法の規定により、公的データベースとの突合が困難である点などを除けば解決されうると考えられる。情報の標準化は日本ではまだ道半ばであり、これはIT化が先行した代償とも言える。施設内でしか活用しない情報は施設内で理解できれば良く、いわゆる標準化の意義は薄い。しかし複数施設の情報を統合するビッグデータ解析では標準化は必須である。粒度の粗い情報は自然言語解析でもある程度は分析できるが、数値情報は最低限の標準化は避けられない。プリミティブな標準化ではあるが、現在日本で900病院以上に導入されているSS-MIX2規格はレセ電形式、DPC関連ファイルとともに一定の標準化が期待できる規格であることは間違いない。我々はこれらの情報を集積することで、医療における後ろ向きデータ解析を飛躍的に進めることを目的としている。もちろんこれらの情報だけで、あらゆる目的の分析が可能ではないが、標準化は多かれ少なかれ一次利用機関である医療機関に負担をかける。部分的ではあっても成果を示すことで、標準化推進の動機となることを期待したい。