Japan Association for Medical Informatics

[3-B-2-PS10-4] 構造化臨床看護知識を用いた学生教育の可能性

井上 真奈美 (山口県立大学)

学生の実習記録は、公的記録とされる看護記録を書くための前段階であり、学生にとっては、専門用語を用いて記述することの困難さを伴うものである。そのため多くの学生が実習記録に対して苦手意識を強く持ち、実習後の学習時間の大半を記録に要している実態がある。教育的な目標を達成するために、①視点の確かさ・網羅性について:もれなく必要な観察事項が観察できているか②アセスメント(思考過程)について:根拠となるデータを用い対象の状態を判断しているか。③実践結果の記述:看護実践を適切に表現することができているか等について、実習記録を通した指導を行っている。学生の記録は、学生の思考経過を見える化し、学生と患者との関わりの中で展開される看護のプロセスを表現するものとなり、教員や実習指導者とともに学生が思考過程を振り返ることを可能とし、学生は看護に不可欠な思考過程を体得していくことになる。
これらのプロセスの中で、特に学生が困難を感じている点は、①患者の状態を示す客観的情報(観察情報・objective data)や患者の主訴である主観的情報(subjective data)をどのように記述するか。②自らの思考過程(アセスメント)をどのように記述すると他者への伝達が可能となるか。③自らの実践を看護実践としてどのように表記すべきなのか。等があげられている。
看護実践用語標準マスターにおける標準化された用語は、学生の「見たものをどう表現すればよいのか」という問いに対して、看護観察編には、観察項目としての観察すべき視点が提示されるだけなく、結果として表記方法及びそのレベルや程度について示されている。また、看護実践行為においては、看護実践の表記方法について定義を含め示されている。さらに、構造化臨床看護知識は、看護者としての思考過程を内在したものであり、初学者への教育に向けて有用であると考えられる。このような基礎教育における取組が、臨床看護サービスの質マネジメントにおいて重要であることについて報告する。