Japan Association for Medical Informatics

[3-B-2-PS10-7] 回復期医療における構造化看護計画・記録の導入プロセスと運用モデル

森松 靜 (医療法人財団利定会大久野病院)

PCAPS(Patient Condition Adaptive Path System:患者状態適応型パス)は、患者状態を基軸として複数の目標状態がリンクされ、分岐・結合を形成しながら患者の最終目標に至る。患者の状態に適合した個別的な看護計画が立案され、観察とケアを提供できるシステムである。回復期医療の役割は、徹底的にリハビリを行いながら患者を急性期医療から維持期への橋渡しを行うことにある。目標の必達には、看護師による的確な看護計画に沿った観察内容が、速やかに医師に報告され早期に治療を行い、状態安定の中でリハビリを推進することが重要となる。

対象となる患者は高齢者が多く複数の疾患を併発しており、従来型の看護計画システムではバリアンスが生じやすく、効果的な看護計画を立案できない場合が多い。また、多忙な業務の影響を受けて計画立案時期が遅れたり、立案者の力量により観察内容の質に差が生じやすい。この度、PCAPS導入による看護計画事例と、従来の標準看護計画事例を比較し、PCAPSの有用性について検証を行った。結果、PCAPSによる看護計画立案では、医師が必要と考える観察事項に対して観察漏れが殆どなかった。逆に従来の標準看護計画立案では、観察事項に漏れが多く発生した。このことにより、従来の標準看護計画では、医師が必要とする観察が行われず、必要な情報が随時医師に報告されない結果となった。

この結果は、以下の要因に起因すると考えられる。個々の患者に対して医師が必要とする観察項目と、看護師が必要と考える項目に差が生じやすい。また、従来の標準看護計画は経験や知識の差に左右され、不完全な観察となる可能性が大きい。この様な問題を解決し、必要な観察が的確に行われ、必要となる情報を医師が随時得られる体制を整えるために、PCAPSの活用は有用であると考えられる。