一般社団法人 日本医療情報学会

[3-C-1-PS6-1] 改正個人情報保護法、次世代医療基盤法と医療情報の利活用

山本 隆一 (一般財団法人医療情報システム開発センター)

2017年5月30日に改正個人情報保護法が施行され、それに先だって5月12日には次世代医療基盤法が公布された。個人情報保護法の改正は簡単に言えば個人情報の保護を厳格にし、安全性を確保した上で利活用を促進することと言える。保護の厳格化は罰則の強化や、第三者提供におけるオプトアウトを届け出制にするなどの変更と要配慮情報の導入が主体で、利活用の推進は匿名加工情報の導入といえる。医療情報から見るとほぼすべての医療情報が要配慮情報にとされ、またゲノムシークエンスが個人識別符号に原則として含められたことから、もとより同意ベースである前向き研究は大きな影響を受けないものの、蓄積された診療情報等を利活用する後ろ向き研究や、いわゆるビッグデータ解析は極めて難しくなった。憲法で保証された学問の自由は個人情報保護法を超えるものであるが、学術研究は比較的狭く定義されており、もっぱら診療を目的とする医療機関や民間企業での開発研究は学術研究には含まれない。このような制限を一定程度緩和するために次世代医療基盤法が制定された。狭い意味での学術研究だけではなく、広い意味での公益的利用目的の医療情報利用を促進するために、認定匿名加工医療情報作成事業者を認定し、安全性と広い意味での公益利用を促進することを目指している。個情法における匿名加工情報の利用も、次世代医療基盤法における匿名加工医療情報の利用も、再特定しないことや安全管理努力が条件であり、無制限に利用を許すものではない。セキュアな環境での利用が極めて大きな意味を持ち、セキュアな環境の確保がなされることを前提とした利用制限の緩和と言える。本シンポでの成果を期待したい。