Japan Association for Medical Informatics

[3-C-2-PS11-5] 在宅医療におけるあじさいネット利用の価値と課題

奥平 定之1, 松本 武浩2 (1.医療法人社団 奥平外科医院院長/長崎在宅Drネット理事, 2.長崎大学病院 医療情報部 准教授)

在宅医療においては、患者の治療歴をいかに確実・効率的に把握すること、開始後は多職種連携によるチーム医療での確実な情報共有を行うことが大事である。2004年に始まった長崎県での医療情報連携ネットワーク“あじさいネット”は、現在、県内の主要34病院のカルテ情報を患者同意の上、ID-LinkまたはHuman-Bridgeの何れかで“閲覧”できる仕組みである。2014年からは在宅医療における多職種連携を円滑にする為に、患者に関わる多職種をチームとして登録、何れかのシステム上に在宅経過を記録し共有する“多職種連携”運用が始まった。同時にiPadの使用も始まり、時間と場所を選ばず情報の閲覧と入力が可能となり有用性が向上した。2016年から始まった“検査結果共有”機能では在宅での検査結果も多職種間で共有できる。あじさいネットが優れている点は複数医療機関の入院、外来の診療録、在宅の医師・看護記録、検査結果、写真・画像等が時系列で患者毎のカレンダー上に集約化される点である。外来化学療法中の病院での状況を“閲覧”機能で把握し、在宅での変化を“多職種連携”で病院医師と共有し、在宅看取りとなった際には途中経過を在宅関係者だけでなく、病院医師・看護師とも共有ができる。在宅看取りの際は医師による説明のタイミングとその後の患者・家族の思いを訪問看護師・薬剤師が傾聴し、共有することが大事であるが、“多職種連携”では瞬時にこれらを共有でき、同じ思いでタイムリーに患者に接する事ができる。
あじさいネットは高度なセキュリティ下で、地域内の病診連携、在宅医療に必要な情報を集約化し有効活用できるため、かかりつけ医として安心して日常診療、在宅診療を提供できる極めて価値が高く、無くてはならないツールと考えている。一方、課題としては、在宅医療を一緒に行うリハビリ職、ケアマネジャー等の参加がまだ少ないこと、現在、限定的に運用されている調剤情報共有を全県下に展開すること等である。