Japan Association for Medical Informatics

[3-C-3-OP22-1] 腎性AKIと腎前性AKIの長期腎予後に対する生存時間解析

永田 桂太郎1, 畠山 豊1, 堀野 太郎2, 松本 竜季2, 寺田 典生2, 奥原 義保1 (1.高知大学 医学情報センター, 2.高知大学 医学部 内分泌代謝・腎臓内科)

[背景・目的] 急性腎障害(AKI)は急激な腎機能の低下を表す比較的新しい疾患概念である。AKIには腎組織の障害を伴う腎性AKIと伴わない腎前性AKIがある。その違いの予後への影響が議論されているが、長期予後への影響については議論が分かれている。本研究では、診療データを用いて、腎性AKIと腎前性AKI後の腎機能変化に違いがあるかどうかを、10年程度の長期間について調べた。
[方法] 高知大学附属病院情報システムに蓄積された1981- 2016年のデータを用いて、AKIを初回発症し、その後回復した患者を抽出した。回復日をゼロ時、eGFR比(予後/回復時)が70%以下となることをイベント、およびイベント発生までの経過時間を生存時間と定義して、カプランマイヤー(KM)曲線、Cox比例ハザード比を求めた。AKI発症時の状態を表す共変量として、年齢、性別、薬剤(抗生物質、降圧剤、利尿剤)投与の有無、糖尿病の有無、AKIグレード、CKDグレードを考慮した。
[結果] 腎前性AKIの鑑別法として輸液投与後数日で腎機能が回復するかどうかがある。 AKI回復に要した日数で層別化しKM曲線を調べると、7日以内に回復するかどうかでイベント発生率が大きく変わることがわかった。7日以内に回復した患者を腎前性 (n=1059), 8日以上を要した患者を腎性 (n=977)と定義し、ハザード比を求めた。ハザード比例性の検定では、糖尿病の有無に関するハザード比に有意な時間依存性が見られたものの、全項目に対するハザード比には有意な時間依存性はみられなかった。共変量について調整を行った後の腎前性AKIに対する腎性AKIのハザード比は1.41(p=0.01)となり、腎前性AKIは腎性AKIに対して長期予後が良好であることを示唆する結果が得られた。