Japan Association for Medical Informatics

[3-D-1-PS7-5] 夜尿症データベースを用いた診療支援システム

吉田 茂 (医療法人葵鐘会)

小児科領域では、5歳を過ぎても夜間睡眠中に無意識に排尿する状態を「夜尿症」と呼び、診療の対象としており、全国の患者数は推計80万人とも言われているが、実際に診療を受けている患者数は4万人程度と言われている。その理由として、一般小児科医にとって「夜尿症」の診療は特殊に感じられることが多く、取っ付きにくい印象を持たれるようである。
その特殊性の一つは、大量のデータ分析を必要とする点であろう。夜尿症診療では、初回こそ、身体所見や検査所見も必要となるが、治療が始まった後は、日々の排尿記録から、夜尿の有無、夜尿量、夜尿時刻、起床時尿量などのデータを数週間ごとに確認し、治療の反応性を考慮して、治療方針の検討を行う必用がある。これらの情報は、通常は自宅で患者が記録した紙媒体の「夜尿日誌」を診察時に持参し、短い診療時間内に医師が確認し、瞬時に患者の前回受診時からの病状を把握して診療方針を決定するという「神ワザ」が必要となる。
現在、多くの医療機関では電子カルテが導入されているが、通常のシステムでは、ロールブラウザと呼ばれる文字ベースの記載欄に記事を書くことしかできず、夜尿症診療で必要とされる機能は存在しない。そこで、筆者は約20年前から、市販アプリケーションソフトウェア「FileMaker Pro」を用いて、「夜尿症診療支援システム(おひさまカレンダー)」を作成して夜尿症外来診療に用いている。
本システムは、カレンダー形式で結果を入力する画面や、過去の記録を月別棒グラフや全経過期間および年度ごとを比較する折れ線グラフ画面、アラームトレンド、ICCS効果判定などをグラフィカルに確認する画面を有し、医師記録記載画面も夜尿症診療に必要な所見が構造化されて簡易に記載され、簡単に電子カルテへ書き込める。
最近は、Web上に同様の仕組みを構築し、海外の患者等に対して試験的に遠隔診療支援ツールとしても使用しているので、若干の知見を加えて報告する。