一般社団法人 日本医療情報学会

[3-E-2-JS6-2] 医療データベース研究の活性化に向けた薬剤疫学の役割

小出 大介 (東京大学大学院医学系研究科生物統計情報学講座)

代表的な薬剤疫学の教科書で薬剤疫学は「人の集団における薬物の使用とその影響を研究する学問」と定義されている。「人の集団における薬物の使用」とは、医療現場などでの医薬品の使用であるから、薬剤疫学は主として市販後医薬品の使用実態に適用されると日本薬剤疫学会はホームページで説明している。国際薬剤疫学会においてもホームページで薬剤疫学について、語源となる薬理学、特に臨床薬理学と疫学の橋渡しをする科学としている。そして薬剤疫学は、臨床における人での薬物の効果を研究する点では臨床薬理学と同じ役割を持ちながら、薬理学的な課題に対して疫学的手法を応用している。
特に近年情報技術が進歩して、多くの医療施設で病院情報システムや電子カルテが導入され、さらにこれらを統合するインフラが整いつつあり、これら大規模なリアルワールドデータを活用してさらに薬剤疫学的な研究により、医薬品の安全性を迅速かつ適切に評価していくことが期待されている。これは2008年米国FDAで始まったSentinel Initiativeに代表される事項であり、また国内でも2011年厚生労働省の「医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会」の提言で、日本のセンチネルプロジェクトの推進であるとか、薬剤疫学研究者の倍増とも記述されたことからも、医療データベース研究を活性化していくにあたって薬剤疫学の果たす役割は大きいと思われる。