Japan Association for Medical Informatics

[3-E-2-JS6-3] 電子カルテを用いた仮想臨床試験:研究や教育への応用

浅井 聰 (日本大学医学部薬理学分野)

リアルワールドの大規模医療情報活用の社会的ニーズが産学に存在しているのは論を俟たない。医療情報データの効果的な二次利用を目的にする場合、データ項目の長さや単位、日付型が異なったり、データベース間での一貫性が無い、データを利用者側が整理・変換するのは煩雑などの理由から発展しづらい。日本大学医学部では、10年以上前から病院情報システムから独立した臨床データウエアハウスである「日本大学臨床データマネジメントシステム( NUSM's CDMS)」を構築してきた。概要は、2017年3月の時点で、患者プロファイリング(性別、生年月日、病院コードなど約224万人の患者情報)、病歴情報(約122万人)、15年間分の検査履歴情報(患者約77万人)や8年分の薬剤オ-ダリング情報(患者約64万人)、患者注射履歴情報(約27万人)を格納、毎月追加更新されている。細かな条件で絞り込んでも統計解析が可能な大規模な臨床情報であり、長期間にわたる時系列の情報の提供も可能である。SAS Enterprise BI serverを採用し、企業や研究者からのニーズに応じたデータ抽出、加工、マイニング、レポーティングを可能にし、研究者の要望に対する意思決定のスピードと情報品質の向上を目指してきた。研究では、薬剤疫学研究や、臨床医学,医療現場から生じた疑問を科学的に検証することを主眼とし、10編以上の査読付き国際誌に成果を発表た。製薬企業とは、後ろ向き市販後調査を短期間に行い社会ニーズに貢献してきた。また、医学教育においては、国際基準に対応した医学教育認証制度に合わせて、薬理学、臨床薬理学会として講義、実習の教育内容の調査、情報交換、見直しや指針(ガイドライン)を検討すべき時期が来たと考えている。医療情報を利用した実習教育法は、未開の段階であり、今後の薬物治療学での展開も含め、医学生のみならず、大学院生、研修医を含めその教育波及効果は多大であると思料する。これらの一端を紹介させて頂く所存である。