Japan Association for Medical Informatics

[3-F-1-OP16-5] 学会主導のデータベースJRODのデータ項目からみるデータの現状と課題-粒子線治療の経過観察のシステム化に向けて-

西村 美幸, 橋本 光康 (国際医療福祉大学大学院)

1.背景と目的
 放射線治療領域における学会主導のデータベースに日本放射線腫瘍学会の放射線治療症例全国登録(JROD)がある。JRODのデータ項目には治療前・中・後の情報があり、治療効果や予測等の2次利用には治療後の長期に亘る経過観察の情報が重要となる。学会はデータ項目を放射線治療部門情報システム(RTIS)で管理することを推奨しているが、データの信頼性や現場業務上最適かどうかは評価されていない。本研究ではJRODのデータ項目について医療機関及びRTIS開発メーカーに放射線治療情報の取扱いの実態を調査し、経過観察のシステム化に向けて検討した。
2.方法
 対象は医療機関6施設(粒子線4、X線2)及びメーカー8社である。方法はアンケート調査を用いた。医療機関にはデータ項目の記録やデータ提出の運用状況、メーカーにはRTISのデータ項目の保有状況等について調査し、医療機関及びRTIS間で比較を行った。分析は統計ソフトウェアSSPSを用いた。調査期間は2016年6月~11月である。
3.結果
 医療機関のデータ提出の対応率は平均62項目(57%)で、治療後の対応率が最も低かった。RTISのデータ保有の対応率は平均81項目(75%)で、RTIS間のデータ保有の対応率には有意な差がみられた。
4.考察
 医療機関において治療前後の記録は電子カルテの利用が中心であるもののデータ提出にはRTISが利用されている。しかしながらデータ提出のため電子カルテとRTISへの2重作業を行うなど、RTISの利用には課題があると考えられた。特に治療後の経過観察のデータ取得のプロセスや記録の持ち方は経過観察業務全体から取り組む必要がある。今後の増加するデータ蓄積を前にさらに実態を分析し、経過観察に対応したシステム化について追及していきたい。