Japan Association for Medical Informatics

[3-F-2-JS4-2] 循環器疾患診療実態調査(JROAD)の現状と展望

中村 文明1,2, 日本循環器学会 IT/Database委員会2 (1.国立循環器病研究センター, 2.日本循環器学会IT/Database委員会)

循環器疾患診療実態調査(The Japanese Registry Of All cardiac and vascular Disease: JROAD)は、日本循環器学会の主導により循環器疾患診療に関する我が国の現状を把握するため、2004年より循環器科・心臓血管外科を標榜する施設を対象に実施している調査である。調査内容は、施設ごとの病床数、医師数など施設規模情報、急性心筋梗塞や心不全など循環器疾患患者数、検査件数、治療件数データの収集を行っている。2012年調査よりデータセンターを国立循環器病研究センターに移管、運用を開始し、循環器研修施設、研修関連施設より100%の登録率を達成している。
また、2014年度よりDPC(診断群分類包括評価)対象施設より循環器疾患患者のDPC情報の収集を開始した(JROAD-DPC)。これにより、施設情報と患者個人情報を組み合わせた分析が可能となった。同時に調査協力施設へ、診療の質指標(Quality Indicator:)の測定値をフィードバックすることを開始した。2015年度からは紙面での報告書に加えて、WEBでのフィードバックを開始し、現在はBusiness Intelligence toolであるSpotfire(R)を用いて、WEB上でデータの視覚化と簡単な分析が行えるシステムを構築した。
2016年度の調査では。JROADは1,573の施設が参加しており、JROAD-DPCは739施設から938,605件のデータが収集され、循環器疾患のビッグデータとなっている。蓄積されたデータを循環器疾患の医療の向上につなげるために、日本循環器学会は学会員から研究テーマの公募を行い、現在までに25課題を採択した。現在はデータの分析が進み、論文投稿準備まで到達した課題もある。
今後の展望は、各施設へのデータのフィードバックを充実させることで、参加施設へのインセンティブを確保し、JROAD-DPCの参加施設数を拡大させていく予定である。また、これらのデータから対象者を抽出し、二次的な追加調査を行う事で大規模な臨床研究を効率的に行う事も検討している。