Japan Association for Medical Informatics

[3-F-2-JS5-1] ―歯科保健行政の視点から―

山口 聖士 (厚生労働省医政局歯科保健)

平成23年の東日本大震災において、身元確認における歯科情報の有用性がおおいに示されたが、一方で、歯科医療機関が保有する歯科情報の保存様式は統一されておらず、大規模災害時の多数の身元不明遺体の照合において効率化・迅速化を図るために、歯科診療情報の標準化の必要性が明らかとなったところである。そこで厚生労働省では、平成25年から「歯科診療情報の標準化に関する実証事業」を立ち上げ日本歯科医師会に委託するとともに、有識者を集め「歯科診療情報の標準化に関する検討会」を開催してきた。その結果、平成28年度までに、歯科診療情報の形式を統一化するための「口腔診査情報コード仕様」を完成させ、実装段階にまで進捗したところである。今後は、標準化のみならず利活用や普及についても検討するため、後継事業となる「歯科情報の利活用及び標準化普及事業」を平成29年度に立ち上げた。この事業では、前事業の未完了部分の実施しながら、モデル地区を設定し「口腔診査情報コード仕様」に準拠した電子カルテ等の実証を行いながら、生じた課題について情報共有及び解決を図る。また、「口腔診査情報コード仕様」の厚生労働省標準規格の取得についても検討を行う。さらには、標準化した歯科情報の利活用において、将来的には地域医療ネットワークへの応用など汎用性を持たせられる仕様となっており、国民や医療従事者に向けての周知及び理解を得ることが、重要課題の一つであると考えている。本事業でも「歯科情報の利活用及び標準化普及に関する検討会」を立ち上げるとともに、標準化と利活用においてさらにワーキンググループにて議論を行う予定である。標準化した歯科情報によって、身元確認に限らず、地域包括ケア時代を見据えた多職種連携等に幅広く資するために、今後具体的な議論が必要となる。