一般社団法人 日本医療情報学会

[3-F-2-JS5-5] ―歯科医療管理学の視点から―

白圡 清司 (日本歯科医療管理学会)

近年の我が国は、高齢化の進展等の人口構造の変化、う蝕の減少等の疾病構造の変化やICTの普及等による患者意識の変化と歯科治療技術の向上などにより患者に応ずる歯科医療の需要が高まってきた。
そこで2025年に向けて高齢化が進展する中で、住民のニーズに応えるため、地域住民を主体として、各関係機関が連携を強化し、医科医療機関や地域包括支援センター等との連携を含めた地域包括ケアシステム(地域完結型医療)の中での歯科医療の提供体制の構築が必要となった。
「地域包括ケア」を推進するにあたり、妊婦から乳幼児、小児、成人、高齢者、在宅から終末期まで、有病者や診療所に来院できない人も含めた患者のライフステージのなかで、患者が健康に過ごすために、かかりつけ歯科医がいかにかかわっていけるか、「新しいかかりつけ歯科医のあり方」という視点で考えていかなければならない。そのためにも多職種連携に必要な歯科情報の発信が重要である。
平成28年度診療報酬改定にて、地域包括ケアシステムにおける地域完結型医療を推進していくため、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所が新設された。この機能を持つ診療所歯科医が担う務めは、う蝕又は歯周疾患の重症化予防に係る管理、摂食機能障害及び歯科疾患に対する包括的で継続的な管理である。
一般の人びとは、歯科医院を選択する際に、通いやすさ、診療時間が自分に合うなど、利便性を求め、いわゆる「いきつけ」的な感覚を持っていたと考えられる。
日本歯科医師会は「かかりつけ歯科医」を「患者のライフサイクルに沿って、口と歯に関する保健・医療・福祉を提供し、地域に密着した役割を果たす歯科医」と位置付けている。
歯科医療管理学の視点から考えると、地域住民に「安全・安心・信頼の歯科医療の提供」を行うことが大前提となり、う蝕、歯周疾患の重症化予防に係る管理、摂食機能障害及び歯科疾患に対する包括的で継続的な管理を行うことになる。重症化予防という観点から過度の医療や重複投薬・検査を防止して患者を守るという「ゲートキーパー」の要素と、患者にとって何が一番大切で、どのようなケア・治療が必要かを判断する「ゲートオープナー」の要素も求められている。歯科から発信する情報を多職種で共有することにより、より安全で安心な医療を提供し、地域住民が生涯自分の住み慣れた街で暮らしていけるようにしなければならないと考える。