Japan Association for Medical Informatics

[3-G-1-PS9-5] 「第3回プライバシーワークショップ」開催報告

千田 浩司 (日本電信電話(株))

今年10月23~25日に行なわれる「第3回プライバシーワークショップ(PWS2017)」の開催報告を行う.PWSは,情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会の主催で2015年から,パーソナルデータの利活用とプライバシー保護を両立させる技術や基準の発展を目指し,学術機関や現場の技術者等との間で議論・交流を行う場として継続的な活動を行っている.PWS2015では,匿名化処理とそのアタックの技術を競うコンテスト「PWS Cup」や,「現場で求められるプライバシー保護」と題して医療情報の研究者も含めた学際的な議論が活発に行われた.PWS2016では,PWS Cupの開催や,企画セッションとして「プライバシーを保護したゲノム利用の現状と課題」と題したパネル討論等が行われた.パネル討論では,ゲノム利用とプライバシーに関する専門家が集まり,ゲノム利用においてどのようなプライバシーリスクがあるのか,技術的な対策はどこまで進んでいるのか,そして法制度の整備状況など多岐に渡り理解を深めた.一般講演においても,ゲノム利用とプライバシーに関する話題が多く見られ,関心の高さが伺える.
今年のPWS2017では,基準が具体化されつつある匿名加工情報をより強く反映させたPWS Cupの開催,そして欧米で本格的な議論が進みつつある,パーソナルデータ利活用におけるプライバシーリスクとその技術対策を踏まえた討論,さらにはパーソナルデータをセキュアに「名寄せ」して横断的な利活用を行うための技術や基準の構築に向けた検討が行われる予定である.特にパーソナルデータのセキュアな名寄せは,2017年4月に成立した次世代医療基盤法の下でパーソナルデータを扱う上での重要な要件となることが想定される.
PWSでは,セキュリティやプライバシー保護が様々な分野で重要なファクターであることを踏まえ,学際的な取り組みを積極的に企画している.今後も医療情報とセキュリティ・プライバシー保護の接点で議論を深めていきたい.