一般社団法人 日本医療情報学会

[3-G-2-OP25-2] 慢性心房細動アブレーションの新たな治療戦略に向けたインシリコの応用

芦原 貴司1,2, 坂田 憲祐2, 奥山 雄介2, 小澤 友哉2, 土谷 健3, 原口 亮4, 稲田 慎5, 中沢 一雄6, 堀江 稔2, 杉本 喜久1, 永田 啓1 (1.滋賀医科大学医療情報部, 2.滋賀医科大学循環器内科, 3.EP Expert Doctors-Team Tsuchiya, 4.兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科, 5.姫路獨協大学医療保健学部, 6.国立循環器病研究センター医療情報部)

【背景】高齢化社会を迎え脳梗塞や心不全の原因である心房細動に対する治療は社会的急務である.薬剤抵抗性の心房細動には心臓カテーテルを用いたアブレーション(心筋焼灼)による肺静脈隔離術が主流だが,慢性化した心房細動に対する有効性は低く,新たな診断・治療戦略が求められている.
【方法】我々は難治性心房細動のリアルタイム映像化が治療成績の改善に繋がると考え,これまでに培った心内心電図の信号処理技術およびインシリコ(コンピュータシミュレーション)研究技術を応用し,オンライン・リアルタイム不整脈マッピング装置(ExTRa Mapping)を開発した.心房内で記録した双極信号をもとに,時空間的に足りない電気生理学的情報をインシリコおよび人工知能で補完して,心房細動を瞬時に映像化するシステムである.それを当院の実臨床例に応用し,本装置の有用性を検討した.
【結果】(1)インシリコで再現したヒト慢性心房細動の興奮動態の動画と,そこから算出した心内心電図に基づき本装置で再構築した動画を比較し,本装置のマッピング精度は心房細動における複雑なリエントリーを映像化するのに十分なレベルであることを確認した.(2)当院で慢性心房細動アブレーションを施行した患者30例において,心房細動中の心房内双極信号を本装置で解析したところ,全例で心房細動の持続に関わる興奮旋回の動画を瞬時に得ることができたが,治療標的と考えられる興奮旋回の分布が,患者ごとに大きく異なっていた.
【結語】我々の開発した本装置は,従来術式における心臓カテーテル操作に変更を加えることなく,複雑な不整脈を瞬時に映像化できる新しいタイプの心電情報処理システムであり,医療情報学と臨床不整脈学の融合によって生まれた.患者負担を増やさずに,難治性不整脈のオーダーメイド医療を実現する上で,このような不整脈映像化は有用であることが示唆される.