一般社団法人 日本医療情報学会

[3-H-2-PS12-1] 病院内薬剤情報の伝達・共有

田中 忠宏, 堀川 幸子, 長塚 元子, 宮川 美香, 田上 治美 (済生会熊本病院)

病院情報システムにおける安全な薬物療法のための情報伝達には大きく2つの方式がある。一つは添付文書等に記載される用法用量や注意事項等の薬剤情報を必要な時に参照できるように整備される医薬品集等の「事前情報」であり、これは利用者が自発的に参照する必要がある。もう一つは、薬物療法の指示を出す、もしくは施行されるタイミングで、それらが安全でない可能性がある場合に指示者や施行者に気をつけてもらうべく表示される「適時情報」であり、オーダーシステムのチェック機能や警告表示システムのように利用者の意図に関わらず強制的に伝達される。
病院は、研修医から専門医まで、あるいは新人看護師から特定分野に精通したベテラン看護師まで、薬物療法に限ってみても知識量に大きな差のあるスタッフが常に混在して働いている。病院薬剤部としては、薬剤情報をこれらの全ての層に届けるように、事前情報と適時情報をバランス良く整備しなければならない。
当院では院内医薬品集システムであるDIデータベースを約10年に渡って運用しており、医師や看護師に向けた事前情報として広く認知されている。また、適時情報としてのオーダーシステムのチェックや警告表示システムも常に改訂を続けている。
しかし、どんなに情報伝達方法を工夫しても危険な指示が数多く存在するのが現実であり、最終的にそれらを正すものとして薬剤師による調剤時の処方鑑査や、病棟および外来における薬剤管理指導業務が大きな役割を担っている。当院ではこれらの活動の結果としての薬物療法への介入事例が月に400~500件報告されるが、報告事例は毎月の専門チームによる評価を行うことで適時情報の新たな作成や改善に活用され、またDIデータベースの情報更新にも利用されている。
本演題では、病院における薬剤情報の伝達・共有の一例として、当院における上記の薬剤情報の提供および整備の一連のサイクルについて紹介する。