Japan Association for Medical Informatics

[3-H-2-PS12-5] 看護師への薬剤情報の伝達・共有

瀬戸 僚馬 (東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科)

従来では薬剤師と看護師との間の情報共有は必ずしも十分とは言えなかった。昨今では病棟薬剤業務が定着して両者間の情報共有が円滑になってきたとはいえ、お互いの職種が何を補完し合う必要があるかを、十分に議論できているとは言い難い。よってどのような情報を共有すべきかはまだ検討の余地があるが、他方で、それぞれ多忙な中で、もっぱら情報共有のために入力負荷を課すようなシステム運用も望ましいとはいえない。
薬剤師と看護師の情報共有においては、薬剤師は前工程、看護師は後工程となるのが基本である。従って、薬剤師は医薬品の有効性や安全性に関する情報を看護師に伝達するし、看護師はこれらの観察結果を薬剤師にフィードバックするという情報フローが生ずる。もっとも、既存の情報フローは、単にオーダエントリーシステムで処方情報が流れるというものに過ぎず、有効性や安全性に関する情報が紐づいている訳ではなかった。
例えば、痛みの観察を例に考えてみる。ナースコールの3大発呼理由は、点滴終了、排尿・排便、そして痛みである。つまり痛みを原因とするナースコールが頻繁になっているときと、鎮痛剤の投与タイミングは、ほぼ重なるということだ。もちろんナースコールデータにはバイアスも多く、そのまま何かの根拠に用いるのは早計である。ただ、生活を支援する看護師の性質上、ナースコールに限らず多くの看護データには少なからずバイアスが伴う。よって薬剤師と看護師で扱うデータが質的に異なるという点も、既存のデータを有効に活用する議論を進めていく方が、建設的であると考える。このような見地に立って、より有意義な情報共有のあり方を議論していきたい。
この報告は、科研費・基盤研究(C)課題番号16K12222による成果の一部である。