Japan Association for Medical Informatics

[3-H-3-OP20-6] 母子健康手帳の省令様式データ項目のHL7 FHIRリソースへのマッピングとその評価

清水 伸平, 田中 昌昭 (川崎医療福祉大学大学院 医療福祉マネジメント学研究科 医療情報学専攻)

【目的】
近年、PHRに関心が集まっている一方で、その相互運用性に関する問題が提起されている。母子健康手帳は、生まれる前からの個人の健康情報を記録したものであり、PHRの原点といえよう。そこで、本研究では、PHR標準化の一例として、医療情報の標準交換規格として開発の容易さなどを特徴とするHL7 FHIRにより、母子健康手帳の項目をどの程度カバーできるかマッピングを試みて、問題点を考察した。
【方法】
はじめに、厚生労働省の母子健康手帳省令様式に含まれる妊娠期に限定した項目を網羅するデータモデルを作成した。続いて、FHIRの公式サイトより、データモデルの各項目に対応するリソースを選択してマッピングを試みた。FHIRリソースに備わっている要素を可能な限り用い、拡張機能を最小限にした。そして、テストサーバ(HAPI FHIR)を用いてリソース間の関連や要素記述の誤りを検証した。
【結果】
母子健康手帳は10個のセクションおよび194個の項目からなるが、「子の保護者の職業」を除く全ての項目のマッピングが可能であった。マッピングできなかった項目については、拡張機能を用いた。母子健康手帳自体はCompositionリソースで枠組みを作成し、各項目はPatient、Observationなど13種類、110個のリソースで記述した。
【考察】
FHIRは再利用性を高めるために、情報を細分化しすぎているため、プログラムが煩雑になりがちで、リソース単位でのRESTful APIによるサーバとのやり取りも頻繁になるため、FHIRの利点とされる開発の容易さと効率性は期待していたほどではなかった。しかしながら、FHIRリソースはそれ自体が独立した意味を持つオブジェクトで、リソース単位で他のシステムと情報交換ができるため、ドキュメント単位でデータの交換をするHL7 CDAと違い、相互運用性が容易となると考えられた。