Japan Association for Medical Informatics

[3-L-1-PP5-4] 電子カルテ情報を活用した多施設臨床効果データベースの構築と課題

桑原 篤憲1, 片岡 浩巳2, 柏原 直樹1, 岡田 美保子3, J-CKD-DB 企画運営委員会4 (1.川崎医科大学, 2.川崎医療福祉大学, 3.公益財団法人先端医療振興財団, 4.日本腎臓学会)

【背景】慢性腎臓病(CKD)は心血管病、末期腎不全と強く関連し、実態把握と予防・重症化抑制は喫緊の課題である。日本腎臓学会と日本医療情報学会は、厚生労働省臨床効果データベース事業及び臨床研究等ICT基盤構築研究事業として新規の包括的CKDデータベース(J-CKD-DB)の構築に着手している。DB構築過程で判明した諸課題を報告する。
【方法】全国21大学病院の参画を得た。2014年の各病院受診患者で、18歳以上、尿蛋白1+以上、かつ/または、eGFR 60 ml/分/1.73㎡未満をCKDと判定し、SS-MIX2標準化ストレージから連結不可能匿名化した患者基本情報、診療科、入退院年月日、関連検査値、処方・注射薬剤、病名等を抽出し、データセンターに登録した。MCDRS(東京大学)を活用した。
【結果】2017年6月時点で、約76000人からなるDBを構築した。電子カルテマスタと標準マスタ(JLAC10, HOTコード)とのマッピングに多くの労力を要した。一部外部業者へ委託した。診療科の定義の標準化、検査値の単位の誤出力、一部情報の欠落、ローカルコード混入等の予期し得ない問題にも遭遇した。
【考察および結論】SS-MIX2実装医療機関においても、診療情報標準化の度合い(標準マスタへのマッピング状況等)は異なっており、多くの病院では、ローカルコードによる運用がなされていた。標準作業手順書を作成したが個別的対応を要し、事業推進の律速段階となった。病院業務への負担軽減を図るため、経験を有する専門業者に委託する必要があり、相応の事業経費を要した。電子カルテ情報を活用し、多施設が参画する臨床効果DBを構築するためには、①医療情報部門と診療科、院内各部門(薬剤部、臨床検査、医事課等)の協力、連携体制の構築、②課題解決能力を有し、進捗管理を行うプロジェクト管理部門の構築が不可欠であると考えられた。