Japan Association for Medical Informatics

[3-L-1-PP6-2] 研究症例登録の省力化とデータの質向上に向けた、電子カルテ上で症例入力を行う研究支援システムIncreasの試み

猪飼 宏, 樫部 公一, 石田 博 (山口大学医療情報部)

【目的】症例登録フォームと診療録への二重記載の手間を削減し、診療録および研究データそれぞれの質を向上させることを目的として、複数社の電子カルテのテンプレート機能を用いた症例登録フォームを実装し、医療情報システム内の既存情報を最大限に活用する入力支援システムを開発し、評価を行った。
【方法】国内電子カルテベンダー大手3社それぞれのテンプレート機能を用いてNational Clinical Database (NCD)の症例登録フォーム(Case Registration Form(CRF)のうち今回は消化器外科共通項目・医療水準評価術式の2書式)に対応した入力環境を作成し、CDISC-ODM形式による標準的な項目定義に基づいてSS-MIX拡張ストレージ内にODM-XML形式による各社共通のデータを蓄積する環境を開発した。ODM-XML形式データは、NCD新規症例アップロード機能の要求するcsv形式など、任意のファイル形式への変換ツールを備えた。また、各病院内ではDPCデータならびにSS-MIX2標準ストレージによる検査・処方歴を集約・提示し、必要な診療情報を可能な限り一元表示できるローカルビューアを作成した。以上のシステムを中四国の6大学に展開して外科医・入力補助者へ供覧・実演し、使用感について評価を求めた。
【結果】最大1021件の入力項目を電子的に定義し、電子カルテ上でのデータ入出力を確認した。ユーザーからの評価は通常使用される入力項目125件のうち、初回は患者基本情報のみ自動生成したが、患者基本情報を中心に51項目は将来的に自動生成が可能であると考えられた。6大学の利用者からのフィードバックは操作性・有用性いずれについても大きな問題は指摘されなかった。
【結論】電子カルテ上で症例登録を直接入力する環境は診療者・入力者の負担を軽減し、各社電子カルテ内のデータとの連携は効率化・データの質改善を深める可能性が示唆された。外科以外の疾患領域へも試行的に展開しており、これからの疫学研究ツールとして各種研究の発展に寄与できることを願っている。