一般社団法人 日本医療情報学会

[3-L-2-PP7-2] 日本‐ASEAN地域間における遠隔病理コンサルテーションの有効性検証

荒井 龍1, 吉田 裕2, 山田 真善2, 木村 達1, 齊賀 弘泰1, 奥津 元靖1, 中野 浩介3, 真野 誠1, 上條 憲一1, 斎藤 豊2, 落合 淳志2 (1.日本電気株式会社 医療ソリューション事業部, 2.国立がん研究センター中央病院, 3.株式会社リベルタス・コンサルティング)

背景・目的
近年,ASEAN諸国でもがん患者数は増加し,がんの確定診断を行う病理医の数が著しく少なく課題となっている.加えて,内視鏡医と病理医が協働した日本の消化管がん早期発見・治療体制への関心は高い.このため,病理医の支援や内視鏡医との連携を目的とした病理画像解析システムを含む遠隔病理コンサルテーションシステムの有効性を検証した.

手法と検証結果
日本の国立がん研究センターと,タイおよびインドネシアのがん拠点病院とを個々にネットワークで結び,消化管がんを対象として本システムを検証した.

タイではバンコクのNational Cancer Instituteとタイ北部のLampang Cancer Hospitalにおいて,画像解析システムと一致しなかった症例や現地医師の希望を考慮して対象症例を選択した.内視鏡及び病理画像を日本へ転送し,病理医と内視鏡医によるリアルタイムのコンサルテーションを実施した.通信・画像転送等は概ね問題なく,かつ現地病理医や内視鏡医から高い満足度が得られ,コンサルテーションの有用性が示された.一方,準備作業が双方の医師の負担になるという課題が残った.

インドネシアのDharmais Cancer Hospitalでは,準備作業の負担を軽減するために開発したOn-Demand Consultationシステムを用いて,病理画像や内視鏡画像,症例情報をパソコンで共有し,其々が都合の良い時に質問や回答,コメントを相互に登録できるようにした.これにより両国の医師の負担が軽減されたとともに,現地医師へのヒアリング調査から,インドネシアでもコンサルテーションが効果的であることを確認した.

結論
本コンサルテーションシステムはタイ及びインドネシアへ導入可能であり,現地医師にとって効果的であること,内視鏡医と病理医の連携による日本の消化管がん診療の強みを伝えられる有効な手段であることが明らかになった.

本研究は総務省「スマートプラチナ社会海外展開事業」と「インドネシアにおけるICTを活用した遠隔医療モデルの展開に向けた調査研究」の委託で実施した.