Japan Association for Medical Informatics

[3-L-2-PP7-3] 急性期病院を踏まえた認知症者個別ケアのための動画利用の検証

阿部 慈美1, 竹村 匡正2 (1.公益社団法人 兵庫県看護協会, 2.兵庫県立大学)

厚生労働省は、急性期病院の認知症ケアの現状を、個別性に合わせたゆとりある対応が後回しにされ、認知症の症状が急速に悪化しているとしている。個別ケアが提供されない要因の一つとして、ケアに必要な情報の不足があげられる。また、総務省はICTの動向について、誰もがスマートフォンなどのモバイル端末を活用して、動画や音声を容易に扱える時代となり、低廉かつ簡便な医療・介護情報連携ネットワークの可能性が期待されるとしている。そのような中、認知症ケアのチーム間での共有に動画利用は効果があるとの報告がある。本研究の目的は、認知症患者の個別ケアのために、動画は文章に比べて必要な情報をより的確に伝達することができるかを検証することにある。対象は認知症看護認定看護師20名、研究方法は、模擬の認知症者を設定し、長期入院の要因となりやすい「食事」と「排尿」について、ケア情報として動画から情報を得る群10名、文章から情報を得る群10名に分け、質問表によりそれぞれから得られた情報と動画利用の課題について回答を得て、結果を比較分析した。本研究は兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科研究倫理委員会の承認を得たうえで、模擬動画作成協力者である認知症者とその家族、研究対象者に研究目的、趣旨、研究方法に加えて、予測される利益と不利益、研究への協力とその撤回などについて説明し、同意を得て実施した。結果は、動画の方がより多くの生活機能に関する情報が得られる事が明らかとなった。内容については、文章は患者の日々の平均的な状態や経過による変化といった情報は的確に伝達できた。動画は認知機能情報や動作スピードや言葉のテンポなど、文章では伝わりにくい情報を伝達でき、より具体的で、ケアイメージがつきやすい結果となった。しかし、臨床で動画情報を活用するには、動画の保存やPC環境、動画を視聴する時間的コストなど課題も多いことが予測された。