Japan Association for Medical Informatics

[3-L-4-PP11-5] ヘルプデスク問合せ事例を利用者行動の視点から整理・分析する意義

津久間 秀彦1, 太田原 顕2, 亀田 さつき2, 田中 武志1 (1.広島大学病院医療情報部, 2.山陰労災病院医療安全管理部)

【背景】病院情報システム(以下HIS)に関連したインシデントレポート(以下IR)やヘルプデスク(以下HD)データを業務分析に活用した先行研究はいくつか存在するが、IRデータとHDデータが別々の視点で扱われていた。それに対して著者等は先行研究で、利用者行動の視点から両データ群を統合的に分析することが医療安全向上やHISの機能・運用の改善に繋がることを、主としてIRの実データで示した。しかし、HDは実データ不足のため充分には検討できなかった。
【目的】HDの実データの利用者行動に関連した事例から、どのような示唆が得られる可能性があるかを調査する。
【方法】全ての問合せを記録しているA病院のHDデータ(2014年4/1~6/30:1993件)を対象に、利用者行動に関連した事例を抽出して分類した。
【結果】(1)入力済の記録の修正・削除・承認取り消し等の依頼87件、(2)患者選択ミスに伴う記録の不備の修正依頼9件、(3)重複した記録の削除依頼4件、等が抽出された。
【考察】結果(1)は、「①管理者権限が必要、②利用者自身が実施可能」に分かれた。前者には責任性の明確化のために修正理由を明記しておくべきと思われる事例が見られたが大半の事例で記載はなかった。“理由”を記載しておけば、蓄積された事例から、後日「機能/運用/機能と運用のバランス」等の問題の有無を検討する材料にもなりうる。また後者(②)では機能の周知の必要性が示唆されるが「機能の存在が分かりにくい?」という観点も重要である。(2)や(3)のリスクの程度は事例によるが、安全管理部門と連携して問題点検討のきっかけにするべきである。HD業務では障害対応に負荷がかかるのが一般的である。そのため、IRデータに比べHDデータでは情報収集の密度が祖になりがちで、今回のデータも全般にそうであった。より有用な分析を行うためには、利用者行動の視点からの情報収取・分類方法の検討と、業務負荷面で実行可能な運用方法を検討する必要がある。