[3-L-4-PP12-1] 北海道の急性期脳梗塞診療に対する地理的アクセシビリティ分析
【目的】急性期脳梗塞診療の提供体制には地域格差が指摘されており、特に医療提供の乏しいへき地に居住する人々に対する医療提供体制の整備が急務である。本研究の目的は、北海道における急性期脳梗塞診療の提供体制の地域格差を明らかにし、早急に対策すべき地域を同定することである。また、既存の医療資源を活用した効率的な対策案の提示を試みる。【方法】北海道においてrt-PA (recombinant tissue plasminogen activator)静注療法および血管内血栓除去術を提供する施設の30分および60分到達圏を算出し、到達圏外に居住する65歳以上人口の割合から地理的アクセシビリティを評価した。また、急性期脳梗塞の画像診断に用いるCT(computed tomography)および血管内血栓除去術に用いる血管造影システムを急性期脳梗塞診療に必要な医療資源と定義し、それらを保有する施設の60分到達圏を算出した。急性期脳梗塞診療の提供施設と診療に必要な医療資源を保有する施設の到達圏から、北海道における適切な医療提供体制について検討した。【結果および考察】rt-PA静注療法が提供可能な施設の到達圏外に居住する北海道の65歳以上人口の割合は、60分到達圏外が11.2%、30分到達圏外が21.0%であった。同様に、血管内血栓除去術が提供可能な施設について60分到達圏外が17.8%、30分到達圏外が30.4%であった。二次医療圏単位で評価すると急性期脳梗塞診療の提供が可能な施設への地理的アクセシビリティには地域格差が存在しており、急性期脳梗塞診療は主に人口の多い都市部およびその近郊でしか提供されていないことが明らかとなった。また、診療に必要な医療資源を保有する施設の60分到達圏は、二次医療圏の「日高」を除いて北海道を広くカバーしていることが明らかとなった。診療に必要な医療資源は各地域に配置されていることから、脳卒中診療専門医師を確保し、医療機関間の連携を強化することによって、急性期脳梗塞診療の地域格差の是正につながることが示唆された。