Japan Association for Medical Informatics

[3-L-5-PP13-1] 患者情報統合ビューの開発と評価

橋本 政典, 小南 亮太, 中川 陽介, 石割 大範, 美代 賢吾 (国立国際医療研究センター病院)

【はじめに】
診療録には、ほぼ変わることのない患者固有の基本情報と、日々変わる病状・検査結果・手術処置投薬治療等の情報が記載される。紙カルテ時代には前者は一号用紙、後者は二号用紙に書かれていた。実際の診療では患者の診療経過が重要になるため二号用紙には定期的な要約が必要になる。電子カルテでは、機能毎に画面が用意されておりそれぞれの経過を見るのには便利になったが、全ての機能を紙のように机に広げて一覧できるような俯瞰性に欠ける。そこで、診療開始時に把握しておくべき、患者の医療情報を一画面で閲覧できる患者情報統合ビューを開発した。
【開発方法】
電子カルテのディスプレイ面積は有限であり、そこに配置されるべき情報について、医師2名、看護師2名、薬剤師1名、診療情報管理士1名、情報管理室職員2名で検討し、病院の情報委員会での議論を経て決定した。それに基づき、NECと開発をおこなった。
【開発結果】
配置する項目は、病名、プロブレムリスト、手術、レジメン、疼痛スコア、転倒リスク、共有情報、記事、公開メモ、アクセス履歴とした。各項目は、電子カルテ情報からリアルタイムで抽出し表示することとした。また、情報は任意の診療科別表示、全科表示を可能にした。
【評価と考察】
各項目を、一つ一つ閲覧した場合、複数の機能画面を開いたり、スクロールをしたりといった操作が必要であるが、開発機能により患者選択時に無操作で診療および医療安全に関わる基本的な情報が閲覧可能となり、大幅な業務の効率化が図られた。特に一見必要ないと思われた「記事」だが、デフォルト表示を所属診療科にしておくことで複数科にかかる患者の当該科の前回診療時情報を得るのに有用である。「アクセス履歴」は診療とは関係のないアクセスを抑制するのに効果が期待できる。今後は使用状況による項目の見直しや各種サーベイランスの登録項目表示等への応用も考えている。