Japan Association for Medical Informatics

[4-B-1-JS7-2] 使われる退院時要約となるための課題 –作成側の立場から-

嶋田 元 (聖路加国際大学 情報システムセンター)

退院時要約は、「他の医療者に簡潔に伝えるために,必要な患者情報をまとめたもの」として正しく作成されていれば有益な情報として利用されうる。迅速な作成のための時間的プレッシャー、認知限界を超えた医療情報、何を記載すべきかの訓練の欠如などが患者のケアに重要な情報を欠落させるとする報告もあり、理想的かつ適切なタイミングで作成することは困難である。
作成時点では、自院の再診時、救急受診時、逆紹介時、情報照会時など、いつ、どの場面で使用されるかを目的とせずに作成されることがほとんどであろう。時間をかけて作成した入院経過の要約は入院中に起きた重要と思われる出来事を叙述的にまとめた航海日誌的な記録になりやすくケアを引き継ぐ次の医療従事者のための要約にならないこともある。さらに電子カルテ運用病院においては電子化された退院時要約の内容のほとんどが電子カルテに保存されており、退院時要約だけにしか存在しないような情報は極めて少ない。
そのような状況下でも救急受診時に過去に作成された退院時要約があるだけで、カルテレビュー時間そのものが少なくなり、診療も比較的スムーズに進むことも事実であるが、複雑な背景を持つ患者の増加、入院期間の短縮、業務量の増加などにより、今後はこれ以上の質の担保は困難な可能性が高くなるであろう。
作成側の立場からは、退院時要約が、いつ、どのような場面で最も多く利用されているか、そしてどのような内容が最も重視されるかなど利用者側の意見をもとに、必要最小限の項目について重点的に記載することが望まれる。さらに医師事務作業補助者でも作成できる退院時要約とすることも今後の標準化には必要な議論であろう。