Japan Association for Medical Informatics

[4-C-1-PS15-1] 遠隔医療の着実な推進に向けた課題整理

落合 孝文 (渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)

本講演では、以下の点を中心に、遠隔診療に関する法制度上の課題について議論を行う。



1 医師法

「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」(厚生労働省医政局長 2015年8月10日付事務連絡)等医師法20条の「診察」の意義について、初診非対面が許される場合等を含め、今後さらに具体的な議論がなされる必要がある。医療相談サービスが実施される例が増えており、医師法17条における医療行為の範囲について、ガイドラインを制定する等のサービス提供体制に関するガバナンス構築が望まれる。



2 診療報酬、健康保険法

遠隔診療を用いた場合の診療報酬の適用は、電話等再診のほかは、遠隔画像診断等の限定された場面にとどまっている。今後診療報酬がされるべき場面及び診療報酬が与えられるべき場面について議論が必要である。健康保険法上の、混合診療禁止原則についても、遠隔診療自体又は組み合わせて医療ICTに係るサービスを提供する場合の、有償とすべき範囲についても整理が必要である。



3 医療法

医療法において許容される診療提供場所は「病院」及び「診療所」と解されていたところ、今後の医療ICTの利活用、医師等の医療従事者の効率的な医療提供を考えた場合に、医療提供を許される場合について議論が必要であり、医療法上の考え方に加えて、患者の個人情報・プライバシー保護という観点が考慮されるべきである。



4 薬機法、薬剤師法

患者への薬の処方について、医師による院内処方では患者への対面説明義務が課されておらず、薬剤師による処方の場合と不均衡が生じていること、遠隔服薬指導の在り方について議論がなされる必要がある。



5 医療過誤の責任

遠隔診療において、個別の学会等における診療ガイドラインを通じて、医師が遠隔診療を行うべき際に果たすべき注意義務が示されることが必要である。