Japan Association for Medical Informatics

[4-D-2-OP27-3] ベイズ学習を用いた女性の健康管理スマホアプリの開発

片山 裕加里, 小山 紘明, 土屋 拓海, 田中 昌昭 (川崎医療福祉大学 医療情報学科)

【目的】
スマートフォンの普及に伴って生理管理アプリ等の女性健康管理アプリが開発され利用されている。しかし、そのほとんどは診察時の利用を想定していないため、問診票に記入する項目を入力する機能がない。そのため、せっかくアプリを利用していても必要な時に必要な情報が引き出せない。そこで、本研究では既存の問診票を精査し、必要な項目をアプリで管理できるようにした。また、入力した情報を有効活用するためにアプリに疾患を予測する機能を実装した。
【方法】
無作為に抽出した10病院の問診票の項目を精査して、病院間で一致した割合が8割以上である場合にその項目の重要性が高いと判断してアプリの入力項目に加えた。疾患の予測にはベイズ学習を用いた。その際、医中誌から子宮頸がん、子宮体がん、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣腫瘍の5つの疾患名で検索して得た原著論文の抄録を用いて分類器の学習を行った。疾患毎に抄録を100件から500件まで100件ずつ増やしながら交差検証によって分類精度を確認し、学習に必要な最適な抄録数を調べた。
【結果】
合計で34個あった問診票の項目の中で10病院全てが挙げていたのは8項目であった。それらは、来院の目的、生理について、最近の月経、閉経、生理痛の有無、生理痛がある人はその回数、薬や注射のアレルギー、飲んでいる薬である。また、8割以上が一致する項目は16個あり、全体の48%を占めていた。疾患分類については、学習に用いる疾患毎の抄録数が200件のとき正解率は68.6%となり最も高かった。
【考察】
女性健康アプリを個人健康記録の一形態と捉えた場合、他のアプリやシステムとの連携が必要となる。HL7 FHIRなどの標準を用いた相互運用性の確保が望まれる。疾患予測については専門的な用語が頻出する学術論文の抄録ではなく、日常的に使われている用語からなるテキストをコーパスに用いて分類器を学習する必要がある。