Japan Association for Medical Informatics

[4-E-2-OP28-2] 教師なし深層学習による読影中の注視点軌跡からの特徴量抽出の試み

寺下 貴美, 堤 翔子, 佐藤 充, 土井 邦雄, 小倉 敏裕 (群馬県立県民健康科学大学)

【目的】近年、コンピュータ支援診断の発展が著しい。しかし、コンピュータ支援診断が確立しても、人間の読影技術の向上は必要である。種々の診断画像の読影法は解剖、病理および撮像学的な見地から、経験も踏まえ確立されている。しかし、実際に人間がどのように画像を認識しているかを評価するのは難しい。例えば、ROC曲線での評価はアウトカムの評価であり、プロセスは評価しておらず、教育的には不十分である。読影過程を評価する一つの方法に、注視点の解析があり、多くの研究が報告されているが、単に移動距離や注視時間を分析するのみで、読影中の行動を評価してはいない。そこで我々は読影プロセスの評価を目的に、教師なし深層学習を用いて、読影中の注視点軌跡における特徴量の分析を試みた。
【方法】対象画像は10枚のCTコロノグラフィ腸管内部展開像とした。読影は診療放射線技師8名で行った。まず、1画像当たり約30秒で順次読影を行い、注視点データを得た。注視点データは0.02秒毎にモニタのXY位置で記録される。次に注視点を30点ごとにプロットした画像を軌跡画像とし、それらを学習セット10,426枚とテストセット206枚に分割した。この学習セットに対してオートエンコーダで教師なし学習を行い、16の分類フィルタを作成した。この分類フィルタを使い、テストセットを分類した。分類結果について軌跡画像と同部位の原画像を表示し、どのような行動かを特定した。
【結果】分類フィルタを大別すると、画像を走査している行動と一部分を注意深く観察している行動が特定できた。また両者の原画像には、病変のある画像と病変のない画像が含まれていた。これはアウトカム評価で偽陰性とされてしまうことが、病変があっても気付かない「見落とし」と、病変を認識していながらも病変ではないと判断した「見逃し」のような読影のプロセスを表しているのではないかと示唆された。