一般社団法人 日本医療情報学会

[4-E-2-OP28-4] ベクトル心電図特徴量と不整脈発生起源との関係

稲田 慎1, 井上 優子2, 柴田 仁太郎3, 山本 剛2, 芦原 貴司4, 相庭 武司2, 草野 研吾2, 池田 隆徳5, 三井 和幸6, 中沢 一雄2 (1.姫路獨協大学医療保健学部, 2.国立循環器病研究センター, 3.新宿三井ビルクリニック, 4.滋賀医科大学循環器内科・不整脈センター, 5.東邦大学医学部, 6.東京電機大学大学院先端科学技術研究科)

[背景・目的]不整脈の治療方法の一つとして,発生起源を高周波により焼灼する方法がある.そのためには,不整脈発生起源を同定する必要がある.現在は,不整脈発生起源同定のために12誘導心電図が用いられているが,熟練を要する.そのため,より客観的かつ容易な同定方法が確立すれば,手技時間の短縮が期待される.本研究では,不整脈発生起源同定のための心電図解析システムを開発し,健常者と患者の心電図を比較検討することを目的とした.[方法]12誘導心電図を解析し,不整脈発生起源を同定するためのシステムを試作した.システムは12誘導心電図から,心臓内の電気的興奮の広がりを三次元的に捉えることが可能なベクトル心電図へ変換し,ベクトル心電図の特徴量から不整脈発生起源を同定するものである.ベクトル心電図の特徴量として,三次元空間内におけるベクトルループが最大となる方向を選択した.[結果]まず,健常者およびペースメーカ外来患者の心電図の解析を行った.健常者と患者では,心室の興奮開始と終了に対応するベクトルループの特徴量が明らかに異なった.このことから,心室内の興奮発生起源をベクトル心電図から捉えることが可能であると考えられた.そこで,焼灼治療施行前の患者の心電図について,自発興奮と不整脈に対応する心電図の解析を行った.それぞれのベクトル心電図からは異なる特徴量を得ることができた.また,不整脈発生起源が異なると特徴量も異なったことから,ベクトル心電図から不整脈発生起源を同定できる可能性が示唆された.[まとめ]本研究で検討した特徴量を用いることにより,不整脈発生起源を同定することが可能になると考えられた.今後は,心電図を自動的に解析し不整脈発生起源を同定するアルゴリズムを開発するとともに,シミュレーションで得られた興奮伝播過程から心電図を理論的に算出することで,実計測と理論を併用した高精度の同定手法確立を目指す.