一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-1-OP26-1] 機械学習を用いた感染症予測モデルの構築と検証

田中 龍也1,2, 山下 哲平1, 田中 伸1, 近藤 学3, 佐藤 仁3, 池田 睦3 (1.滋慶医療科学大学院大学, 2.社会医療法人 祐生会 みどりヶ丘病院, 3.NECネクサソリューションズ株式会社)

目的:
病院における感染防止対策は、患者が安全に医療を受けるために必要な業務である。しかしながら、看護師や医師が感染の疑いを判断し注意を払うことは、日々の業務量から考えても現実的ではない。そのため、過去の電子カルテ情報を用いて、各患者の感染症の発症確率の高さを予測することにより、感染症の判断を補佐するシステムを実現できないかと考えた。そこで本研究では、国際統計分類ICD-10におけるA09「感染症と推定される下痢及び胃腸炎」を対象とし、電子カルテから出力されたSS-MIXⅡデータで取得できる情報を元にA09を判別するモデルの構築とその検証を行った。

方法:
2011/4/18から2016/6/22までの期間に入院した患者194,100名のうち、
ランダムに抽出した155,643名(学習群:A09罹患者4,411名)を判別モデルの学習に用い、残りの44,467名(検証群:A09罹患者1,012名)により判別モデルの性能を検証した。判別に用いる入力情報としては、匿名化した患者基本情報、外来時と入院時の過去の傷病履歴(A09以外)などを用いた。機械学習および判別を行うソフトウェアとして、NECのRAPID機械学習を使用し、NECネクサソリューションズ株式会社と実施した。

結果:
検証群を用いて、入力変数から患者のA09への感染確率を計算し、0.5以上であれば陽性と判別した。A09感染者1,012名のうち陽性と判別されたものは804名(感度79.4%)、非感染者43,455名のうち陽性と判別されたたものは5,893名(偽陽性率13.6%)であった。また、偽陽性率が5%となるカットオフ値(P=0.899)を用いたとき、感度は52.3%であった。

考察:
感染症の確率を計算することにより、日常の感染管理をサポートできる可能性が示された。今後は、薬剤の履歴など他の情報を加えることにより、さらに精度を高め、確率に応じた患者隔離などの感染管理を実施した場合のコストなどを検討していく。