一般社団法人 日本医療情報学会

[4-F-1-OP26-3] 5大癌における入院時併存および入院後発症感染症について

中村 高子1, 小林 利彦2, 外山 比南子3 (1.国際医療福祉大学大学院, 2.浜松医科大学, 3.医療データサイエンス研究所)

【背景】

がん登録の5大癌における入院時併存および入院後発症感染症の種類にはどのような違いが有るのだろうか。それは、医療資源を最も投入したがん傷病名の併存および発症感染症について調査することで分かるのだろうか。

【目的】

がん登録の5大癌の併存感染症と発症感染症の違いを調査する。

【方法】

(1) 対象データ:国立大学法人一施設の2010年度~2014年度DPC調査データ(52,094件)

(2) もっとも医療資源を投入した傷病名コードが胃癌(C16)、大腸癌(C18,C19,C20)、肝癌(C22)、肺癌(C33,C34)、乳癌(C50) の5大癌を対象とする

(3) がん初発グループとそれ以外のグループの2グループに分ける。

(4) ICD-10のA,B,Uで始まるコードを感染症とし、3桁まで同じ物を同一コードとする。

(5) 初発および初発以外における併存感染症と発症感染症の種類の比率、両感染症のクロス表を作成する。

【結果】

併存感染症は初発以外グループの肝癌において最も罹患率が高く(38.3%)、次に肝がん初発グループ(37.1%)でウィルス性肝炎(B18)だった。肺がん、大腸がん、胃がんの初発以外のグループの併存感染症がそれぞれ、8.6%,6.3%,5.5%だった。敗血症はどのがんにも共通し、肺がんは結核(A16)、消化器系は胃腸炎(A09)だった。5大がんの中では、乳がんにおける感染症の割合が最も低かった。発症感染症は胃腸炎、敗血症が多かった。併存、発症感染症の割合は、ともに、初発グループが低かった。

【考察】

感染症の罹患率は初発グループの方が初発以外グループよりも低かったのは、がんの治療歴が短いことが考えられる。

【結語】

5大癌の入院時併存感染症と発症感染症の違いについて、がんの初発グループと初発以外グループの2グループに分けて調査した。併存、発症感染症の割合は、ともに、初発グループが低かった。併存感染症は臓器により特徴があったが、発症感染症は臓器によらず、胃腸炎、敗血症が多かった。