Japan Association for Medical Informatics

[4-H-2-JS12-2] ICTを活用したDiabetic Kidney Diseaseの成因分類と糖尿病腎症重症化抑制法の構築

脇 嘉代1,2 (1.東京大学大学院 医学系研究科健康空間情報学, 2.東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)

我が国における腎疾患患者は年々増加傾向にあり、平成26年末には約32万人が透析療法を余儀なくされている。透析に至った原因疾患は糖尿病が43.5%と第一位であり、糖尿病患者の急増、高齢化の進展を背景として糖尿病腎症が増加している。糖尿病腎症の発症予防、重症化抑制法の構築は喫緊の課題である。一方で、受診継続率の向上、かかりつけ医・専門医の連携、定期的食事生活指導の継続により腎臓病の進行を抑制しえることが国の戦略研究「腎疾患重症症化予防のための戦略研究(代表:山縣邦弘)」によって示されている。既に諸種の取り組みが実施されているにも関わらず、糖尿病腎症の発症・重症化抑制には成功しているとは言いがたい。現状の課題として、疾病管理、生活習慣並びに服薬管理、十分な医療連携、健康・疾病情報の標準化と有効活用、糖尿病腎症の早期発見・早期介入の必要性が挙げられる。
本事業では1. 糖尿病腎症重症化抑制のためのICT(Information and Communication Technology)システム(DialBeticsPlus)の開発とICT活用した糖尿病腎症患者の疾病管理・重症化抑制モデルの構築、2. Diabetic Kidney Diseaseの実態解析、成因分類、診療実態解析、3. 大規模レジストリを用いた糖尿病患者の Diabetic Kidney Diseaseの発症および進展因子の同定を目的としている。特にICTの活用の有効性を検証するため、病院・診療所・調剤薬局による連携運用モデルを考案し、病院・診療所・調剤薬局が連携して神奈川県で糖尿病腎症患者を対象に実証試験を行う予定である。本事業の遂行により、対面式診療に支えられたICTシステムの運用と、標準的治療の普及率およびガイドライン遵守率を上げることでevidence-practice gapの改善が期待でき、糖尿病腎症の診療の均霑化を推進できる。