Japan Association for Medical Informatics

[4-H-2-JS12-3] EHRを活用した糖尿病の患者支援PHRから診療支援重症化予防プログラムの開発

松久 宗英1, 谷口 諭1, 玉木 悠2 (1.徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター, 2.徳島大学病院病院情報センター)

わが国でもEHR(Electronic Health Record)の普及が緩徐ながら進んでおり、260余りのEHR連携が地域で展開している。徳島県でも全県EHRをめざし、厚生労働省が標準規格とするIHE-ITI統合プロファイルを用いた電子カルテメーカに依存しないEHRの構築に取り組んでいる。さらに電子カルテを持たない医療機関の診療データも活用できる双方向参照の実現を進めている。
糖尿病は血管障害からがん、認知症まで多様な合併症があり、その重症化阻止は、国際保健機構も認定する国際的な健康課題である。その対策において、かかりつけ医から糖尿病専門医は勿論、腎臓、循環器、腫瘍外科、神経内科など多診療科の専門医の連携が求められる。EHRに基づく広域な連携基盤は、正確性、迅速性、そして簡便性から循環型を旨とする糖尿病診療連携の基幹技術として期待されている。さらにEHRは、医療者間の連携基盤としてだけではなく、組織横断的に統合された臨床データの多目的な活用を可能とする。IoTを活用したPersonal Health Record(PHR)との連携による患者支援ツールや、臨床データに基づく適正な医療者支援ツールなどEHRを活用した基盤の潜在的ポテンシャルは極めて大きいものである。
我々も患者支援ツールとして、患者の治療目標、合併症の程度、そして日々の自己計測データの可視化を可能とするPHRを開発してきた。その使用は患者の病態理解の向上や遠隔診療としての有用性が示されている。また、糖尿病患者の甚大な医療費につながる末期腎不全の抑制、あるいは加齢による身体活動低下の原因となるサルコペニアの早期診断を可能とする診療支援プログラムも開発している。EHRに集積した臨床データとケースシートに入力した項目から、患者リスクを可視化し、専門医への速やかな紹介や高リスク患者へ治療集中を可能とする。EHR連携を広域展開した地域医療を実現するため、以上のような患者と医療者の両者にメリットが実感できる臨床ツールは、蓄積されたデータの2次利用とともに推進の両輪であると考えられる。