Japan Association for Medical Informatics

[4-I-1-CS8-3] 終末期医療における新しいケア体系と治療法の開発に向けたテクノロジーの応用

仁木 一順1,2 (1.大阪大学大学院薬学研究科 医療薬学分野, 2.市立芦屋病院 薬剤科)

本発表では、「生体情報の可視化」「医療とテクノロジーの融合」にまつわる、終末期医療における自身の取り組みの一端を紹介させていただく。
1つ目は、アクチグラフによるがん患者の睡眠の可視化を通した取り組みである。アクチグラフは、内蔵した加速度センサーによって活動量を検出する小型装置であり、簡便に睡眠時間・効率を測定できる。不眠を訴えるがん患者は少なくないため、我々は、主訴に加え、客観的な睡眠評価のための補助的ツールとしてアクチグラフを用いることで、睡眠薬の効果判定や治療方針の検討に取り組んでいる。また、アクチグラフを用い、睡眠とがん性疼痛の関連性についての研究を進めている。
2つ目は、終末期在宅医療における身体症状の可視化とICTとの融合である。緩和医療の対象となる身体症状評価には、エドモントン症状評価システム(ESAS)が汎用され、種々の症状が点数化される。我々は、ESASを組み込んだスマートフォンアプリを開発し、終末期の身体症状の経日的な経過を可視化し、多職種で迅速に情報共有できるシステムを構築した。これにより、日々の症状変化を意識できるようになったなど、ケアや診療に役立っている。
3つ目は、終末期患者や家族の“想い”の可視化であり、Virtual reality(VR)の応用を試みている。終末期患者や家族が、「最後にもう一度家に帰りたい(帰らせてあげたい)」などと希望していても、実現できないことがしばしばある。そこで、VRによって疑似的にでも、その“想い”を実現できる環境の創出に取り組んでいる。
以上の取り組みはいずれも初期段階であり、さらなる検討が必要ではあるが、将来展望も含めて議論させていただければ幸いである。

謝辞
大阪大学大学院薬学研究科教授 上島悦子先生
市立芦屋病院薬剤科部長 岡本禎晃先生
ガラシア病院ホスピス医長 前田一石先生
おひさまクリニック西宮院長 福田俊一先生