Japan Association for Medical Informatics

[4-L-1-PP15-5] 医療分野におけるTV会議システム導入の費用対効果の検討

松本 武浩1,2, 岡田 みずほ3, 西口 真由美2,1, 江副 智美1,2, 一橋 了介2 (1.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学講座 医療情報学, 2.長崎大学病院 医療情報部, 3.長崎大学病院 看護部)

【背景と目的】
TV会議システムは様々な分野で広く普及しているが、医療分野における利用はいまだ十分とは言えない。我々は長崎県の地域医療情報システム「あじさいネット」の機能拡充として2013年よりVPN基盤上にTV会議システムを導入し遠隔会議やカンファランス、教育講演等に活用している。その費用対効果について検討した。
【対象と方法】
2013年4月より2015年12月までに実施したTV会議および本システムを利用した講演配信において遠隔地からの参加者に対し、開催地までの交通費および宿泊費を公表されている標準的費用により算出し費用削減額と本システム導入費から費用対効果を評価した。
【結果】
総参加施設数、総参加者数は286施設、6,555名、月平均参加者数は194.4人、サテライト会場への月平均参加数は63.7人、全参加者に対するサテライト会場参加率は平均33.8%だった。総交通費は829.1万円、宿泊費を加えると1750.5万円で1年あたり583.5万円の削減効果がみられた。なお、交通費と宿泊費を加えた総額は年々増加しており最終年の2015年の総削減額は839.9万円であった。本システムの導入費用は5年で約4,000万円)であり2015年同等の利用数があれば削減費用が導入費用を上回ることが判明した。
【考察と結論】
TV会議は通常、遠隔会議での利用が主であり、講演中継等の遠隔参加利用は少ない。長崎県では日本一離島が多く、特に効果的であるが、このような利用は極めて有効である。なお、今回の評価によりこのような利用だけでも費用対効果は高い結果だった。現在ではさらに発展してがん診療拠点病院間の定期がん登録研修に利用しており、本システムを利用した遠隔診療も運用テストを実施している。このような様々な利用法により費用対効果は益々高くなると思われる。これらの診療支援と教育効果は極めて高く、これからの医療において必須になっていくものと思われる。