一般社団法人 日本医療情報学会

[4-L-2-PP17-5] 医薬品副作用自動監視システムAVSによる副作用検出の評価

五十嵐 敏明1, 今野 彩1, 矢野 良一1, 塚本 仁1, 蔦本 靖之2, 前田 琢磨2, 後藤 伸之1 (1.福井大学医学部附属病院薬剤部, 2.アイ・エム・エス・ジャパン株式会社)

【目的】医薬品の添付文書には、重篤な副作用予防のため監視するべき検査項目や症状が明記されているが、これらは日々更新され膨大化、複雑化しており、どのように日常診療で活用するかが課題である。我々は電子カルテから副作用と監視漏れを自動的に検出する副作用自動監視システム(automatic vigilance system to detect and prevent adverse drug reactions, AVS)を開発した。今回はAVSによる副作用検出が診療に与えた効果を評価した。
【方法】シグナルとして医薬品とその副作用症状(検査値異常、症状名)を定義し、電子カルテから診療情報(処方、検査値、診療録等)を取得して検出する仕様とした。薬剤師は検出結果の重篤度を評価し、医師へ連絡、観察継続、観察不要を選択した。2016年4月~2017年3月の福井大学医学部附属病院における検出状況と、副作用への対処としての処方変更の有無、処方変更へのAVSの貢献度を調査した。また、副作用に対処せず重篤化した場合を想定し、DPC点数表から副作用の治療にかかる医療費を算出した。
【結果】146品目の医薬品で325件のシグナルを定義した。対象は約8,500名であり、薬剤師が確認したシグナルは約9,000件だった。医師への連絡や観察継続が必要と判断した176件のうち、43件で処方が変更されており、医師が自発的に処方を変更したのは33件、AVSが処方変更につながったのは10件(重篤化した場合の医療費として256万円に相当)だった。観察を継続したものの処方変更がなかったのは127件だった。
【考察】副作用の多くは医師が自発的に対処していたが、AVSが処方変更につながった例もあり、AVSは副作用重篤化の回避と医療費の削減に貢献したと考える。検出されたものの対処不要だった例も多く、検査値のしきい値などシグナル定義を見直す必要がある。