Japan Association for Medical Informatics

[2-A-1-1] 構造化入力によるNCD症例登録支援システムの構築と現状

猪飼 宏 (山口大学医学部附属病院 医療情報部)

 多施設が参加する大規模な症例登録型研究が次々に開始される中、診療録・検査・診療行為・医事等の既存情報を活用したデータ登録の負担軽減に期待が集まっている。
 筆者らはNational Clinical Database(NCD) 専門領域別のCase Report Form (CRF)を手始めに、既存情報を活用した入力支援システムを開発してきた。昨年から運用中のシステムでは、DPC調査データやSS-MIX2標準ストレージからCRFに沿って抽出・集約されたXMLデータを、電子カルテベンダーを限定しない院内ウェブサーバー上のCRF入力画面に初期値として表示させ、半数以上の項目を自動生成した。
 しかし、術前の併存症、手術の詳細、術後の合併症など医師の判断を含む情報は対応が難しい。改善に向けて(1) 処方や検査を組み合わせたデータの精緻な集約を試みたが、効果は限定的であった。(2)電子カルテのテンプレート機能を用いた構造化入力は医療者への負担が残る。そこで(3)部門システムを含む電子カルテ情報の一層の活用、に期待をかけている。
 National Clinical Database(NCD)によるCase Report Form (CRF)は専門領域別に多数の書式があり、今回取り組んだ消化管手術以外の書式も並べて比較した。その結果、概ねすべてのCRFで要求される項目は、性別、生年月日、入院日、退院日、手術日、救急搬送、郵便番号、入院時診断、身長、体重、手術(NCD)術式,術者、手術時間、30日後転帰、退院時転帰などであった。これらは患者プロフィールや手術実施情報に蓄積されているデータであり、入力支援システムから任意に参照できるインターフェイスが望まれる。
 対象疾患の重症度や進行度、術前診断・術中所見・術後合併症等は医師の記載が避けられず、入院時所見~手術記録~退院時サマリといった情報の流れを整理し、テンプレート機能を用いた構造化入力が正確かつ効率的な運用につながると期待される。
 これまでの開発状況を報告し、電子カルテに期待するインターフェイスについて論じたい。