[2-A-3-1] AMEDのミッション:グローバルデータシェアリング
日本医療研究開発機構(AMED)は、3つのLIFE(生命・生活・人生)を包含する医療研究開発の推進によって、一分一秒でも早く研究成果を社会に実装することを目的として平成27年4月にスタートした。それまで3省で行われていた医療分野の研究開発に関する予算運用を集約して基礎から実用化まで一貫した研究マネジメントを行うとともに、限られた事業費を効果的に運用する制度への変更を推進してきた。また、AMEDは発足して最初の年に、リーディングプロジェクトの一つとして「未診断疾患イニシアチブ(IRUD)」を立ち上げた。有効な検査・治療法が見つからない、その疾患の専門家がほとんどいない等、様々な困難に直面している未診断疾患の患者さんの診療に必要な体系的医療システムと患者情報を収集蓄積・開示するシステムの構築、そして研究開発の促進を目指すものである。この領域は、研究者の"Balkanization"などの従来の医療研究開発の隘路となっていた課題を改革する糸口が多く存在し、その課題解決は他の研究領域に大きな波及効果が期待できる。なかでもデータシェアリングは領域を超えて解決すべき重要な課題の一つであり、分散統合・広域連携の実現は大きな挑戦である。AMEDでは、国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)、国際ゲノムコンソーシアム(GA4GH)、多剤耐性菌対策の国際的枠組みであるGloPID-Rへの加盟など国際的な広域連携やデータシェアリングによる課題解決にも取り組んでいる。また、AMEDでは、実用化に重点を置いた研究開発を重視する一方で、ヒトの臨床データの詳細な分析から得られる新たな研究仮説を拾い上げ、基礎研究にフィードバックする、いわゆるreverse translational researchの活性化が重要と考えている。講演ではグローバルデータシェアリングに関するAMEDの取組みと、今後の展望と課題について論じたい。