[2-A-4-4] ISO IDMP (Identification of Medicinal Products) と医薬品コード標準化の動向
医薬品安全性監視活動を推進する上では、世界各国との迅速・正確な医薬品規制情報の共有が重要である。しかし、現在、個別症例安全性報告(ICSR)に用いる医薬品規制情報は、国ごとに独自の名称やコードが使用されており、これが規制当局間での円滑な情報交換を困難なものとしている。そこで、医薬品情報のデータ項目や伝送システムの電子仕様の国際標準化を図るため、医薬品規制調和国際会議(ICH)にて、「医薬品辞書に関するデータ項目と基準」と呼ばれるトピックとして、5つの医薬品辞書の要件が検討され、この要件を基に、ISOでこれらの情報伝達モデルの国際規格(ISO-IDMP)が策定された(2012年11月)。5つの辞書規格とは、「商品名」に対するID (MPID)、「製剤」に対するID (PhPID)、成分名に対するID(Substance ID)、「剤型・投与経路・表現単位・パッケージ」に対するID、「用量単位」に対するIDである。各辞書には、複数の紐づく情報が含まれており、また他のIDMP規格のIDも項目として用いられる。世界各国で共通のISO-IDMPに準拠したIDを実装するためには、MPID以外のIDについては、世界で共通のコードが振られ、各国で利用できるシステムを確立する必要がある。MPIDは各国独自でコード化及び管理をする必要があるが、ISO-IDMPの要件を満たす医薬品コードを整備している国は非常に少ないのが実状である。こうした現状の中、ISO-IDMPを規制の目的以外にも、広く医療現場等で利用していくための議論が国際的に高まっており、欧米では長期的な実装計画のもとに準備を進めている。日本においても、ICH E2Bに基づき、製薬企業ではISO-IDMPをICSRに用いることが規定されている。そのため、本邦でも、国際的な動向も注視しながら、ISO-IDMPの導入に向けた議論が必要と考えられる。