Japan Association for Medical Informatics

[2-B-2-2] 徳島県全域を網羅するEHR「阿波あいネット」で見えた課題

玉木 悠 (徳島大学)

徳島県では、病院単位・二次医療県単位で個別にEHRが展開されていた。導入されているEHRは電子カルテシステムからの情報提供が前提となっており、自治体病院を中心としたHumanBridgeが8病院、大学・JA厚生連・日赤を中心としたID-Linkが4病院と分割されていた。そのため、EHR統一による相互運用性の確保や双方向連携の実現が困難であり、EHRのユースケースが限定されているため参加施設は累計で81施設、登録患者数も約3,000症例に留まっていた。
そこで、医療情報を収集した施設の別なく患者単位でシームレスに統合し、診断・治療に携わる関係者間で共有することを目的とし、「①電子カルテに依存しないデータ収集を可能とするクラウド型EHRの構築」、「②厚生労働省標準規格の採用によるメーカ間連携」を実現するEHR基盤整備と、「③徳島県内における個人情報保護・情報セキュリティの統一」、「④地域住民プロモーションの充実」を実現する運営主体確立のために徳島県全域EHR「阿波あいネット」、及び一般社団法人阿波あいネットを立ち上げた。2017年度においては、94施設の参加、16,007人の参加同意が得られた。参加同意取得にあたっては、患者だけでなく地広く地域住民を対象としたプロモーション活動を展開した。2018年度以降においても順次増加し、8月時点で25,000人を超えた。
EHRのユースケースを増大することで価値を高め、EHR基盤の安定的な運用、運営主体の確立につながると考えていたが、実現にあたり多くの課題が見えてきた。本演題では課題のうち、基盤整備では「院内システムとクラウド型EHRの接続」及び「厚生労働省標準規格への対応」について報告する。また、運営主体整備では「自治体病院参加のための個人情報保護条例対応」、「参加同意取得のための地域住民プロモーションの方法と効果」について論ずる。