Japan Association for Medical Informatics

[2-B-2-3] 適切な地域医療連携ネットワークの構築に向けた課題

秋山 祐治 (川崎医療福祉大学)

医療ネットワーク岡山協議会(晴れやかネット)では、2013年1月より岡山県全域を対象とした診療情報共有の基盤として、主に基幹病院から指定した医療機関等へ情報を開示するGatewayサーバ型システムを展開し、現在51施設に導入されている。この過程には地域医療再生基金が活用されたが、当時のシステムは高機能故に初期導入・更新コストが高く、"一方向"の情報共有という弱点があった。
 そこで、2014年度以降は小規模な医療機関等での展開を目指して、レセプトコンピュータから情報を収集し、マルチテナント型連携サーバと呼ぶ共同利用型のシステム(シェアメド)の導入を進めてきた。今回、平成29年度総務省クラウド型EHR高度化事業を受託し、小規模医療機関等の電子カルテ情報やPACS・モダリティからの画像情報を共有できるようシェアメドの機能を改良し、"双方向"の情報連携の強化を行った。
 このような仕組みの実現には、各々の医療機関等における電子化が進んだことのみならず、診療情報の外部保存が認められるようになったことや、厚生労働省標準規格の制定なども大きく寄与している。晴れやかネットでは、当初より標準仕様を念頭にシステム構築を行ってきたが、今回の事業においては情報出力を行うレセコン・電子カルテベンダーによって標準化対応に温度差が見られ、高額な改修費用を請求してくるケースもあった。今後、全国レベルでの保健医療記録共有を適切に進めていくためにも、種々の医療情報システムにおける情報入出力に際しては、標準化対応を徹底していく必要を強く感じている。
 また、情報連携基盤が構築された後も、費用負担の在り方や患者同意のとり方など、運用面での課題も引き続き議論が必要である。今回の事業を遂行してきた過程で直面した様々な課題や、関係者間での合意形成プロセスを振り返りながら、地域医療連携ネットワークが有する公益性を踏まえて、今後の適切な情報連携基盤の在り方を議論したい。