Japan Association for Medical Informatics

[2-B-3-3] オンライン診療システムを用いた疾患管理と健康経営について

武藤 真祐 (医療法人社団鉄祐会)

 平成30年に初めてオンライン診療が保険収載され、対面診療を補完する事を原則とし、かかりつけ医の機能強化に焦点があてられた。また、患者のアクセシビリティを確保し、医療の質・患者の健康に資するものであるという事が示された。一方、オンライン診療の有用性はアクセシビリティの確保に限らないと考える。患者の生体データ情報の取得についても開発が進み、対面診療とオンライン診療を組み合わせた診療はますます発展していく兆しを見せている。今回は疾患管理と健康経営の二側面からオンライン診療を用いた我々の新たな取り組みについてご紹介したい。
 まず、疾患管理については心不全・COPD・SAS等を対象に実証を進めている。患者がスマートフォンでバイタルサインや呼吸困難などの主訴を入力し、主治医はデータを見ながらオンライン診療や対面診療を行う。COPD・心不全は安定期においても運動等で容易に増悪をきたし、また、イベント発生前にバイタルサインや主訴に兆候が表れる事が先行研究にて示されている。問診による病態把握についても研究が進んでおり、非侵襲的なデータの取得が疾患管理に寄与できる部分は大きい。SASにおいてはバイタルサインや日中の眠気・覚醒状況をモニタリングする事で評価の質が向上する。これらのことから、オンライン診療は治療効果をより高めるツールとして有用性があると考えられる。
 健康経営に関しては、大手飲料水メーカーと共同でオンライン診療の活用に対する事業を開始した。40歳未満の従業員へのオンライン保健指導や、従業員の家族に対するオンライン診療を提供する。アクセシビリティの確保をより広くとらえ、就労や距離的な制約によって健康相談や家族の介護が十分にできない従業員をケアする事で、個人だけでなく企業の健康経営に対してオンライン診療が貢献できると考えている。
 オンライン診療は黎明期であり、その可能性をこの企画では前向きに議論していきたいと考える。